第53話 手間ひまをかける

今回は、私が今まで訪問した飲食店の中で、ある意味“ものすごく”印象深い2軒のお店の話をしたいと思います。

1軒目は、首都圏を中心に複数業態を展開する企業のとある業態のお店。

店に入っていくと、胸に「研修中」の名札を付けた若い女性のホール係が席に案内してくれました。一生懸命なのはわかりますが、まるでロボットと会話しているようでちょっと味気ない。

そして、運ばれてくる料理はどれもイマイチ。極めつけは「ソーセージのグリル」彼女は「大変熱くなっておりますので、お気をつけください。」といって、テーブルに置いていきましたが、一口食べて驚きました。アツアツどころか、冷めてるではありませんか!

ここまでくると、逆に笑いがこみあげてきたのを覚えています。
しかしそこは結構な人気店でした。

2軒目は、東海地方を中心に展開している外食チェーンの某店舗。

こちらはもっと“すごい”お店でした。まずオーダーが満足に取れません。ハンディを操作しているんですが、なんだか危なっかしい。復唱せず、逃げるように戻ろうとするので、呼び止めて確認してみたら、案の定間違えていました。

不安を抱えながら待つこと約10分、スタッフがまず運んできたのは、食後に頼んだホットコーヒー。当然後にしてもらいました。

さらに5分後、今度やってきたのは、娘がデザート用に頼んだパフェ!

それからさらに15分、何も料理は運ばれてこないし、スタッフをやっと呼び止めても要領を得ない返事。ほどなくして我々は店を出ました。でも、店の入り口付近にはウェイティングのお客さんがいっぱい・・・

どちらも10年ほど前に経験したもので、今時はスマホやSNSの普及でこういうお店は生き残れないかもしれません、しかし参考にすべき点は大いにあります。


以前このコラムでお伝えしましたが、飲食店には“3つの価値”が必要です。

一つ目は 基本価値(商品そのものの価値=料理)
二つ目は 周辺価値(商品を選ばれやすくする価値=主に接客)
三つめは 情報価値(商品やお店への期待値をアップさせる価値)

「情報価値」というのはあまり聞きなれない言葉かと思いますが、要は「お店の名前を見たり聞いたりした時に、ある一定のイメージ(良いイメージ)が湧く人が、どのくらいいるのか?」ということです。
※詳しくは コラム第28話 を覧ください

この2軒のお店は、料理(基本価値)や接客(周辺価値)のレベルが低いにもかかわらず結構人気でした。

ホームページやメニューブックでも、お店や料理の紹介だけでなく「当店は〇〇な方のためのお店です」「当店は〇〇にこだわってます」「当店の楽しみ方」等のメッセージを発信していました。

要は【情報発信】に手間ひまをかけていたんです。

言い換えれば、料理や接客のレベルがイマイチなのを、情報を先出しすることで
補っていたともいえます。

一度お店を利用すれば分かってしまいますが、新規の集客には十分通用します。それどころか、大手の場合、よほどのマイナスでない限り、しばらくしてまた新たな情報にひかれて再来店する事だってあったりします。

であれば、料理や接客のレベルが高い、地域密着のお店が【情報発信】をもう少しでも心がければ、もっと強いお店になるのではないでしょうか。
ではどうやって、情報を発信するのか?

テレビや新聞などの既存のマスメディア広告?
→地域密着の個店・専門店には費用対効果が悪く不向きです

ハガキなどのDM?
→取り組んでほしいですが、十分なリストを持っていないお店が多いのも事実

もっと前にやることがあります。

・まずは来店してくれているお客さんに直接伝えてください
・次にお店の近隣の方々との交流を増やし、情報を直接伝えてください
・さらに、インスタやFacebook等にマメに投稿すればいうことなしです

もちろん、伝える情報も大切です。一方的な売り込みではなく、お店のこだわりなど、興味を持っていただける情報を発信していってください。
※伝える内容については コラム第4話コラム第5話 を参考にしてください


【土屋先生からの一言】

新規のお客さん、あるいはなじみの薄いお客さんにとって、来店する決め手は「お店がどれだけ“良さそう”に見えるか?」です。

その判断基準が、一等地への出店や、豪華な外観や、広告の量など、規模や資金力が大きなところが今までは有利でした。

でも今は違います。ホームページ、口コミサイトでの評判、お店のSNS等々、小資本でも互角以上にお店の魅力を発信できる“場”が多数あります。

あなたのお店は、料理や接客といった“おもてなし”には、手間を惜しまず、愛情を込めていらっしゃるはず。

どうか、情報発信にも“手間ひまをかけて”いただければと思います。


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