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第54話 コロナ禍における“共感ポイント”

この原稿を書いているまさに今、コロナ第5波が猛威を振るっています。各地で新規感染者や重症者が急増しており、飲食店のイートイン需要の回復は当分見込めない状態と言わざるを得ません。

一方、外食企業各社の4-6月期の中間決算の発表を見る限り、業種によって、違いはありますが、テイクアウトへの取組が成功しているお店が比較的堅調、という事実が見えてきました。そしてそれは、地域密着の飲食店にも言える事でした。

そこで今回は、私がお付き合いのある4軒のお店の取組みをご紹介しながら、コロナ禍において「どんな提案がお客さんの共感を得ているのか?」について一緒に考えていきたいと思います。

事例その1:馬肉料理専門店

創業明治38年という歴史あるお店ですが、老舗といえどもコロナの影響を免れるものではありません。

このお店は昨年のGW明けからテイクアウトを始めました。まずはオーソドックスに、お店の味をご家庭で楽しんでいただくという切り口で、看板メニューの「桜なべセット」や「おつまみセット」の販売を開始。老舗の銘店の味が自宅で楽しめるというのは魅力で、順調な滑り出しでした。

さらに、コロナ禍ならではのテイクアウト限定のメニューを投入したところ、これが話題になりました。

開発したのは「うな丼」。しかしこのお店は馬肉料理専門店、もちろん普通の「鰻丼」ではありません。

「茄子(なす)」を「うなぎ」そっくりに切って、その下に「桜肉(馬の肉」を敷き詰めた「馬茄丼(うなどん)」です。「“う”のつく料理を食べると夏バテしない(言外にコロナ予防)」という土用の丑の日に向けた、夏限定メニュー。すっかり人気メニューになり、マスコミにも取り上げられました。

事例その2 讃岐うどん専門店 

このお店も当初は「生うどん(ぶっかけしょうゆ付)」や「天ぷら盛り合わせ」など『お店の味をご家庭で』という切り口でテイクアウトを展開。

味が評判のお店だけにスタートは順調でしたが、大きく売上が伸びたのは、テイクアウト限定メニューを投入してからでした。

「味にうるさい頑固店主も食べている、○○(店名)の賄い」という触れ込みで「焼うどん」や「カレーライス」を“コロナ終息まで限定”で販売し始めたところ、これが大ヒット!それに引っ張られるように「天ぷら」や「じゃこ天」等の売上もアップし、テイクアウト売上に火が付きました。

この2軒のお店の“共感ポイント”

馬肉と茄子の「うな丼」今だけ限定とか、がんこ店主が認めた賄いをテイクアウトにするなど、コロナ禍を逆手に取ったしたたかさ、痛快さ をお客さんが感じた点にあると思います。

事例その3 レストラン

当初はランチ向けのメニューを販売していましたが、それだけではイートインの減少を十分カバーできませんでした。

そこで始めたのが「オードブルセット(5千円、7千円、1万円の3コース)」の販売。ディナータイムの看板メニューです。

そして(ここがポイント)料理だけでなく、それをご家庭で存分に楽しんでいただけるようにと、ワインとのマリアージュや美味しい食べ方等々、シェフのうんちくを付けたところ、まるでシェフと会話しているように楽しめる、という事で人気になりました。

事例その4 居酒屋

週に3回4回通うという常連も少なくない、昔ながらの居酒屋。地域のオヤジ達の癒しの場、たまり場、聖地と言ってもいいお店です。

そんなお店にもコロナの影が忍び寄ってきましたが、昔気質の大将は、ランチの提供はもちろん、テイクアウトも一切やりませんでした。

しかしある時、久々に利用してくれた常連さんの「最近体調イマイチでね。コロナより、お店にあまり来られなくなったことが辛いよ。」という一言で、テイクアウトの導入を決意!

人気メニューを日替わりで組み合わせた「晩酌セット!」(1,000円)を発売しました。しかも「ウチの料理で晩酌して元気になってもらいたい!」という思いから『〇〇は温め過ぎないで!〇〇は最初に食べて!○○はレンジにかけてはダメ!』等々、まるで指示書のような手書きメモを付けたところ、これが大うけ!「晩酌セット」は大人気となり、1,500円のセットも登場しました。

この2軒の共感ポイント

『お店にいるようなおもてなし付テイクアウト』といったところでしょうか。みなさん、シェフのうんちくや大将のメモを読んで、顔を思い浮かべながらご家庭で楽しんだことでしょう。共感できますよね。

以上4軒の“共感ポイント”いかがでしたか?
テイクアウトに取り組んでいるお店は皆「お店の味をご家庭で」というアピールをしています。でも、その切り口だけでは差別化が難しくなっている、もうひとひねりアイデアが欲しいんです。それがこれらのお店にはありました。

まだまだ他にもあると思います。あなたのお店ならではの“共感ポイント”をみつけ、提案していただければと思います。


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