第118話 繁盛は一日にして成らず

今回は、ほぼ同時期にサポートさせていただいた2軒の居酒屋さんのお話です。少し前、どちらのお店ともコンサル契約を終了しました。

1軒は1年が経過し、売上も安定し、毎月のサポートがなくても独力で前に進めるようになりました。ということで、今後は必要な時にだけご相談を受ける形になるでしょう。

もう1軒は半年前からサポートしていますが、中々業績が改善しません。結果、6か月の契約期間が過ぎたので更新せず終了ということに。

仮に、業績が改善したお店をAとし、まだ苦戦中のお店をBとします。どちらもオーソドックスな居酒屋さん。実は、結構共通点がありました。

鮮魚が売りの典型的な和居酒屋
客単価はどちらも3,000円程度
席数も約50席でほぼ同じ規模 等

コロナ禍で特に厳しい状況にある居酒屋業態ですが、両店とも危機的な状況とまではいっていなかったので、このコラムでも何度もお伝えしている、地域密着の飲食店の

【繁盛の二大法則】(詳しくはコラム第1話~15話 をご参照ください)
をふまえた、オーソドックスなアドバイスをしました。

結果、1年で業績を回復させたのはA店で、B店は半年たってもいまだ苦戦中。この差は一体何なのでしょうか?

それは【繁盛の二大法則】を“地道に”実践したかどうかの違いでした。

今時、即効性のある一発逆転の策はまずありません。例えば新メニューのヒットなどで、一時的な集客アップはできても、再来店促進のための受け皿ができていないと、長続きはしないものです。

しかし、地域密着のお店であれば、取り組めば高い確率で成果が出る方法は存在します。それは、コロナ禍の今も全く変わりません。ただ、この方法は取り組んですぐに売上アップとはいかず、半年・1年続けて効果が出てくるものなのです。

まずはA・B両店とも、ハガキDMで既存客と“定期的な接触”をしていこうということになり、店内アンケートを活用したアナログでのリスト収集を実施しました。

A店は、取り組み始めてすぐにハウスリストの収集に取りかかりました。半年で約600、1年で1,000名近くのリストを収集。

同時に、

「当店は、お客さんにとってどんな“場”なのか?」
といった事を常に自問自答し続け、対面はもちろん、何度か相談メールや電話もいただきました。

そして最近、

「ウチは〇〇なお客さんを××にするための“場”を目指しています」
と明確に打ち出せるようになったのです。

一方B店は、取り組み始めて約3ヵ月後、ようやくハウスリストを集め始めましたが中々進みません。

リスト収集に成功したお店のトークやオファーの事例、さらにはツールの参考もお渡ししたのですが、うまく活かされていないようでした。

それからさらに1ヶ月ほど経って、
「DMの反応も良くないですし、どうもウチには向いていないようです。何か他の方法はありませんか?」との連絡。

一般的に、飲食店さんでDMが向いていないお店はありません。
思うような反応が出ないのは、リストの『質が悪い』か『絶対数が少ない』か『内容が悪い』か、のどれかです。

このお店は、リストの絶対数がまだ少ないので、売上に貢献するような成果はでるものではありません。にもかかわらず、DMが向いていないという判断をしてしまった・・・

結果、B店は、継続こそが重要な意味を持つリスト収集と定期的なDM送付を
やめてしまったのです。

結果は前述のとおりです。

B店オーナーと、最後になってしまった、打合せの時の会話がいまだに耳に残っています。

「土屋さん。状況はますます悪くなっています。原点に帰ってやり直しますので、何かいい策はありませんか?」

土屋「でしたら、改めてリスト収集を再開してください。無理ならFacebookかInstagramで、まずは最低週1回投稿してください。もちろん友達やフォロワーを増やす努力もお忘れなく。とにかく既存客の流出を止めるのが最優先です。」

対するB店オーナーの答えは、私が今までに何度か聞いたことのあるセリフでした。

「最初にご相談した時ならともかく、ここまで状況が緊迫してきていますので、何かもっと即効性のある策はありませんか?」

この言葉をきいたとたん、私の気持ちの中で、このお店を何とかしたい、という気持ちが“すーっと”消えていくのを感じました。


【土屋先生からの一言

「ローマは一日にして成らず」という有名な言葉がありますね。何事も時間と努力なしには成し遂げられないという意味ですが「お店の繁盛」も同じです。

飲食店経営は短距離走ではありません。瞬発力よりも、コツコツ続けることができる、マラソンランナーのような姿勢が必要です。

短期的な施策の成果に一喜一憂せず

【繁盛し続けるための基盤づくり】

に全力を注いでいただければと思います。


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