第127話 届いてますか? あなたのメッセージ

今回は、集客にお悩みの方向けのお話です。

オープンしたら、特に何もしなくても人が集まる昭和の頃ならともかく、お店もお店情報もあふれている現代は「お客さんをいかに集めるか」は永遠のテーマと言えます。

『情報発信が集客につながっていない』とか『今のやり方では効果をイマイチ実感できない』といったお悩みは常にご相談の上位に入ってきます。

しかし、ここのところご相談をいただいたいくつかのお店に、ある共通点が見つかったのです。それは、ある時点から集客方法を変えた事で成果が出なくなったというものでした。

Case-1

お店で集めたリスト客に、毎月ハガキDMを送っていたキッチン

かかるコストを考え、SNS中心に徐々に移行、InstagramやLINEも使って情報を発信中

Case-2

手書きの封書DMを年4-5回常連さんに絞って送っていた和食店

常連客だけでなく、リストのあるお客さん全員にハガキDMを送付。(内容も宛名面もすべて印刷)。さらにその後、ハガキをやめてLINEを活用して毎週情報を発信

Case-3

2ヶ月に1回ハガキDMを送付していたうどん店

息子さんが継いだ際、ハガキをやめInstagramとLINEを併用して情報を発信 

今やWeb集客がスタンダードと言っていい時代。特にSNSはスマホの普及とともに、多くの人々の生活に浸透し、さらにローコストで始められるという手軽さもあり、地域密着の個人店にとっても使える武器だと私も考えていますし、成果を出しているお店もあります。

しかし、昨年11月の小規模飲食店を対象とした「Web活用に関する意識調査」によれば、多くの飲食店が売上や集客への課題を感じてはいるもの、インターネットを活用した集客に取り組んでいる店舗は17.6%と、かなり少ない事が明らかになりました。(従業員数10名以下の1店舗経営のお店408軒の回答)

ここで注意しなければいけないのは、ハガキがよくてSNSがダメ、みたいなツールや手法だけの問題ではない、という事なんです。

こんな時は基本に戻るのが定石。

地域密着の飲食店の集客の決め手は

「お客さんとの距離を近く保つ事」

「“あなただけ”への個別メッセージ」

これはネット社会になっても、国民総スマホ時代になってもかわりません。

そこを取り違えて、ツールだけ新しいものを取り入れてもうまくいきません。

それどころか、上手く行っていたそれまでのやり方を、便利さやコストの低さ、あるいは時流に乗らなければ、などの理由から、変えてしまったお店は残念ながら失敗しています。

ここで、お客さんといい距離感を保ちながら、手堅く集客できている事例をご紹介します。

Case-A

ある寿司居酒屋さんでは、携帯メールを使ったお知らせサービスを開始。携帯番号をお店に申し出てもらうと、おススメのネタや、その人の大好物などが入った際にメールが届くというもの。登録している常連さんは約50名。週2-3回、数名~20名ほどの方に一通一通メールを送るので、結構大変ですが、1回のメールで平均20人は来てくださっています(友人や家族同伴も多い)。このお店の客単価は4,000円程度。1回のお知らせで約8万円の売上が見込めるのです。さらに、そのメールがきっかけで飲み会のご予約をいただく事も少なくありません。

普通、居酒屋さんからこのような頻度でお知らせが来たら、しつこいなって思いませんか?しかし、このお知らせは好評でした。“興味ある情報が個別に届く”のですから、高い頻度で送られてもOKというわけです。

Case-B

あるビストロでの事例。Facebookでの投稿を毎日欠かさず実施し、手堅く集客できている店でしたが、さらに、常連さんとLINE交換(友だち追加)をして、好きそうな食材やワインが入荷した時に個別にメッセージを送信。ワインや食の好みも知っている親しいお客さん中心なので、ほとんどの方が反応してくれる(その日がダメでも予約が入るなど)との事。

Case-C

ある焼肉店の話。生まれ育った地元で長年お店を経営してこられたご主人は、予約台帳を見て、この先予約が少ないな、と感じると、午後の休憩時間に地域をぶらぶら散歩します。何かを配って歩くわけでもなく、顔見知りに合っても挨拶を交わす程度。営業的な事は一切言いません。しかし、そういうことを数日続けていると、じわじわ予約が入ってくるようになるんです。


【土屋先生からの一言

繰り返しますが、地域密着のお店の情報発信で大事なのは、

「お客さんとの距離を近く保つ事」

「“あなただけ”への個別メッセージ」

どんなツールを使うかとかではありませんので、ご注意ください。

なお、一定の成果が出ている手法を変える時はくれぐれも慎重に行っていただければと思います。


このコラムへのご意見、ご感想などをお待ちしております。

こちらまでお寄せください→ajimori@clock-work.net
または、味守りプロジェクトFBページまで