第66話 値上げラッシュ
この秋、緊急事態宣言の解除や、時短営業の解除など、長らく苦しんできた外食業界にやっと光が差し始めてきました。年末に向け期待を持って臨まれている方も少なくないでしょう。
しかし、ここにきて、小麦や牛肉といった食材や、電気ガス等の値上げラッシュが相次いでいます。加えて人件費の高騰も起こっていて、新たな“悩み”の種になっているかと思います。大手外食チェーン中心に値上げの動きが加速しています。
以前このコラムでも「お客さんに喜ばれてお店も儲かるメニューづくり」というテーマで、値上げに関連するコラムも書かせていただきました。
本来なら、じっくりメニュー分析をして、原価や調理手順の改善をしたり、既存メニューのブラッシュアップや魅力ある新メニューの開発にとりかかるのが王道ですが、この値上げラッシュの中、緊急避難的な対策も必要と思います。
そこで今回は、比較的早く取り組める2つの策をお伝えしていきます。食材の急騰や消費税率のアップ時に、多くのお店で効果を発揮した手法です。
もちろん、大前提として 「値上げではなく、魅力アップをする」
というスタンスで考える事は大切ですので、そこはくれぐれもお忘れなく!
<地域密着の飲食店におススメの具体策>
■その1. 大盛メニューで粗利改善
例えば、チャーシューメンのチャーシューの枚数を増やすとか、ハンバーグを特大にする等、量を増やして、新たなメニューとして提案する。もちろん、原価のアップ分も織り込んだ新価格にします。
ポイントは一気に増やすこと。(見た瞬間に違いがわかること)量も価格も明らかに差をつければ、お客さんは値上げというより、新メニューと受け止めてくれます。
以前、うなぎの高騰が騒がれた際に、価格を据え置いてうなぎの量を減らしたり、小幅な値上げをしたりしたお店の多くは評判を落としています。
あるお店で、逆にうなぎの量を大幅に増やして、2,500円だった価格を4,500円にした「うな重」が大人気となりました。
大幅な価格アップというのは確かに勇気がいりますが、重要なのは、
『お客さんがお店のどこに魅力を感じているかを、把握しておく』こと。
自店の強みを把握し、その強みを活かした「魅力アップ&価格アップ」は成功率が高いです。
様々なモノの値段が上がっている現在、この方法で“利益率”の改善は難しいかもしれませんが、“利益額”はアップできるはずです。
■その2.お客さんが応援してくれる!? 値上げテクニック
今回のように、多くのメニューに影響が出る値上げラッシュがおきると、一斉値上げをする必要も出てくるでしょう。しかし、強引な(とお客さんが感じる)一斉値上げは、大切なお客さんを失う結果になりかねません。
お客さんに納得していただけるor共感できる“理由”を提示していくことが必須になってきます。
お客さんが納得し、さらに応援もしてくれ、一斉値上げに近い効果が期待できる方法があります。
それは「○○だけ値上げさせてください!」という一言
この方法、特定のメニューの構成比が高いお店に非常に有効です。
以前小麦が高騰した時のピザとパスタのお店での事。ちなみにピザとパスタのメニュー数はほぼ同じでしたが、売上構成比は[パスタ7・ピザ3]といったところでした。
そこで「ピザは価格据え置きで頑張ります。パスタだけ値上げをお願いします。」
と訴えました。
売上構成比の高いパスタを値上げするため、実際には全面値上げにかなり近い効果が生まれ、収支が改善しました。
お客さんとしては、お店が看板メニューの一つであるピザの価格を据え置いたことで、パスタの値上げを受け入れやすくなったというわけです。
消費税率アップと食材値上げのダブルパンチで困っていた立ち食いそば屋さんも同じような方法で切り抜けました。
「そばメニューだけ値上げさせてください。うどんはお値段そのままです!」
首都圏のお店でしたので、うどんの売上構成比は23%程度。結果8割近いメニューの一斉値上げに成功。
「麺」と言えば「そば」といっていい首都圏で、そば値上げ・うどん据え置きはちょっと強引かと思われましたが、全品一斉値上げに踏み切る同業他店が多い中、予想以上に好意的に受け入れられたのです。
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【土屋先生からの一言】
価格改定(値上げ)のお知らせのような情報を、お客さんにできるだけスムーズに受け入れていただくには、あなたのお店が日頃から誠実で正直な店舗経営を行っていることも大切です。改めて心がけていただければと思います。
なお、じっくり戦略的なメニューの見直しをするには、コラム30・31・32話を参考にしてみてください。
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