第76話 ステージ

引き続きコロナウィルスの感染が急拡大しています。それに伴い、多くの都道府県で「まん延防止等重点措置」が実施され、まさに今、コロナ第6波の真っただ中に我々はいます。昨年秋の緊急事態宣言解除や時短営業解除から3か月足らずでまた逆戻りとなってしまいました。

今回は、そんなコロナの影響で、大変厳しいという和食店さんにうかがった時のお話をしたいと思います。

昨年10月、緊急事態宣言が明けて間もない頃、1件のご相談がありました。その方は何とtwitter経由で私のホームページを見てくださり、連絡をいただいたのです。

余談ですが、twitterは、飲んだ!食った!こんな音楽が好き!みたいにほとんど個人的な事しか書いていませんが、フォロワーさんが5,000人超えたぐらいから、たまにお仕事の依頼が来るようになりました。

※土屋のtwitterを見てみようという方はこちら→ https://twitter.com/k1956
※twitterアカウントをお持ちでない方は、ブラウザを開いて下記のアドレスを入力し https://twitter.com/explore 表示されたページの一番上の検索窓で 土屋薫 と入力してください。検索結果の一番上に表示される「飲食店コンサルタント 土屋薫」をクリックしていただくと私のページにジャンプします。
注)ほぼ個人的なつぶやきばかりですので、お時間のある時にどうぞ(^^ゞ

さて本題に戻りましょう。そのお店は人口40万人ほどの、地方の中核都市にある和食店です。席数は80席ほどの大型店。オープンは2020年の1月というタイミングもあって、オープン以来ほとんど黒字になっていないお店です。オーナーは建設関係の会社を経営されている方で、飲食店経営は未経験との事でした。

お店にお邪魔してみて驚きました。まず、看板が悪い!大きさはロードサイドの大型店らしく十分な存在感はあるのですが、そこには店名が大きく告知されているだけ。何か和風の施設なんだなという情報しか伝わってきません。

外観から飲食店ぽい感じはしますが、蕎麦屋なのか?日本料理店なのか?すぐにはわかりません。これでは、せっかく幹線道路に面した存在感のある店構えや広い駐車場があっても入店率は低いでしょう。

店内は大型の和食店らしく、ゆったりしたつくりにはなっているのですが、各テーブルの調味料入れが大衆食堂っぽかったり、お客さんが通る通路に、段ボールが積み上げられていたりと、ちょっとアッパーな和食店を狙ったにしては、“特別感”や“非日常感”が欠けていました。

料理は、人気のメニューを数品いただきました。まぁ普通・・・。和食店ならどこにでもありそうなメニューをありがちな器に盛り付け、ポーションも普通。接客も低価格ファミレスよりは多少ましかなという程度。

また、一度来店された方をリスト化してフォローする仕組みもありません。ホームページはありますが。ほぼ更新はなく、お店のSNSもあるにはありましたが、20020年の3月以降投稿なし・・・

オーナーはしきりにタイミングの悪さや長引くコロナの影響を口にしていらっしゃいましたが、このお店ははっきり言ってそれ以前の問題でした。オープン以来ほとんど毎月赤字というのもうなずけます。

私は、初めてお店をやる方から、50席以上の物件について相談をうけても基本的にはあまりおススメしません。例え立地が良くてもです。理由は簡単。大きなお店は初心者がやるには難しいから。経験豊富なホール係や腕利きの料理人を引き抜いてきても結果はほぼ同じです。

まずは、最少人数のスタッフで回せ、お店に立てばお客さん全員が見渡せるような、20席以下のお店が望ましい。お客さんも働き手も少ない、コロナ禍においては一層その傾向が強まっています。

新規出店した、平均点ぎりぎりレベルの大型店が、満足のいく数のお客さんを集めるのは、今時至難の業。たとえコロナ禍でなくともです。

当面は「サイン・看板類の改善」「近隣事業所等へのPR強化」を図りつつ、「メニューの見直し」「店内の整理整頓」にまず取り組むようアドバイス(と言えるほどのものでもないですが)させていただきましたが、撤退を検討することも必要とお伝えして、お店をあとにしました。

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【土屋先生からの一言】

今回のケースは、車の免許取立てでF-1マシンに乗るようなもの。まともに走れるわけがありません。

コロナ禍の今「ネット通販に取り組みたいんですけど。」というご相談をたまにいただきますが、これなども注意が必要。特にイートインだけでやってこられたお店(多くがそうだと思いますが)にとっては、全く別の【ステージ】です。

売りたいものがあったら、まずはお店で手売りしてみてください。なじみのお客さんにテイクアウトで売れないものが、お互い顔の見えないネット通販で売れることはまずないでしょう。

自分自身がまず立つべき【ステージ】や次に向かうべき【ステージ】を間違えないようにしていただければと思います。


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