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第19話 集客UP実況中継【なぜ?】

前回のコラムで、今時の消費トレンドである“応援消費”で好反応を得るポイントは“共感”であり、共感を得るためには“なぜ”そういう取り組みをするのかを伝える事が大事、というお話をしました。

今回はその典型的な事例をご紹介したいと思います。

※現在進行形の案件のため、可能な範囲でのご紹介となります、悪しからず


3号店だけ

ある地方で、3店舗を展開する麺類専門店。コシのあるプリプリ麺が美味いと人気のお店です。口コミサイトでの評判もなかなか高く、どのお店も駅近の立地にあるためお昼時は行列必至。

しかし、昨年11月にオープンした3号店が不振なので見て欲しい、ということで、お店にうかがいました。

お会いした社長は40代半ば、元気いっぱいのポジティブ社長でした。

数字に強く、情報に敏感、勉強熱心、そして人好き。リーダーの資質十分といっていいでしょう。

その戦略は明快です。

・あの「〇〇製麺」以上の商品力・接客力(セルフ形態にしない)をキープ

・乗降客の多い駅近に小規模店舗を出店

・夕方のちょい飲み需要も取り込む

1号店も、2号店も、オープン以来順調に売上をつくり儲かっています。そして、自信満々で望んだ3号店の売上が伸びません。赤字とまではいかないまでも、毎月トントンといった状態。

「立地もほぼ同じ、メニューや味はもちろん一緒。何でなんでしょうか?」

社長は納得いかない表情です。

もちろん、コロナの影響は否めません。オープン以来好調だった1・2号店も春先は一時、昨対を大きく割り込みました。

社長曰く「コロナの影響ばかりじゃないんです、多分。」

6月頃から、天ぷらなどトッピングのテイクアウト販売に力を入れ、人気だった炊き込みごはんもおにぎりにして販売。1・2号店は7月から徐々に売り上げを回復させ、9月はほぼ昨年並み、10月11月は若干ですが昨対を超えています。しかし、3号店はさっぱり成果が出ず、引き続き低迷中。

「社長の夢」は何ですか?

まずは、社長とじっくりお話をさせていただきました。

土屋「社長の夢といいますか、目標は何ですか?」

社長「それはですねぇ・・・」(社長は目を輝かせ、熱く語ってくださいました)

・5年で10店舗出店

・〇〇地方ナンバーワンになる!

そしてゆくゆくは

・日本一のうどんチェーンに!

社長の目標は大きく明快です。

しかし・・・次の質問で、社長は言葉に詰まってしまいました。

土屋「なぜ、そうされるんですか?」

(なぜ5年で10店舗なのか?)

(なぜ〇〇地方ナンバーワンになりたいのか?)

(なぜ日本一のうどんチェーンになりたいのか?)

もちろん、売上などの数値目標は必ず必要です。しかし、その目標を自分ひとりで達成するのはなかなか困難。家族、社員、アルバイト等、一緒に頑張ってくれる仲間がいて初めて可能になります。仲間の協力なしには日本一どころか「5年で10店舗出店」も難しいでしょう。

そして、みんなが同じ目標に向かって進んでいくには、数値目標だけではダメ。「なぜそれを達成する必要があるのか?」この【なぜ?】がみんなの“共感”を得るものでないと、たとえ身内でも思うように動いてはくれません。

もう一つの質問

私はもう一つ質問をしました。

「スタッフとのコミュニケーションは最近どうですか?朝礼とか定期ミーティングはやられていますか?」

社長「1軒目をオープンした時は毎日やってたんですが、2軒目を出した頃から段々やらなくなってしまって、今では月に1回の会議(社員のみ出席)だけです。スタッフとの距離が遠くなっているのは感じていたんですが・・・」とのこと。

これで、3号店苦戦の第一の原因がはっきりしました。スタッフが“共感”できる【なぜ?】が提示されていないことが問題だったのです。スタッフに“共感”されていないのに、お客さんの“共感”を得るのはまず無理ですよね。

社長には『具体的目標を【なぜ?】達成する必要があるのか?』を言葉にしていただくようお願いしました。また、朝礼も復活していただくようお伝えしました。(店長主導で)

商品力も立地も社長の行動力も優れているこのお店が、コロナに負けず、再び成長軌道に乗る日は近いでしょう。

【土屋先生からの一言】

飲食店には3店舗の壁がある、とよく言われますが、このお店もまさにその壁に当たっていました。2軒目までは個人の頑張りで何とかなったりします。

壁を越えるには仲間の協力が欠かせません。トップだけでなく、スタッフみんなが“共感”できる【なぜ?】をきちんと伝えることがまず大切です。

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