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第108話 値上げ最前線

このテーマでコラムを書くのは、昨年11月と今年の5月に続き3回目となります。それだけ世の中で様々な値上げが続いているといえます。

帝国データバンクの「食品主要105社」価格改定動向調査によれば、9月には2,400品目以上が値上げされ、、10月には年内最高の6,500品目以上の値上げが予定されているとの事。11月には一旦、値上げの波が落ち着く見込みですが、断続的な食品の値上げは、2023年も続いていくというのが大方の予想です。

さらに、この10月からは最低賃金の改定が始まります。前年度からの上げ幅は31円と過去最大です。

この秋以降の飲食店経営への逆風はさらに強くなりそうです。

そこで今回、地域密着の飲食店さんの店主の方々に、値上げラッシュと言っていいこの状況でのお困り事や、どんな対応をされているか等をうかがいました。比較的多くのお店で活用できるor参考にしていただける取組ではないかと思いますので、なるべく原文のままご紹介させていただきます。

なお、お忙しい中、期日までにご回答いただいたみなさんにこの場を借りてお礼申し上げます。ご協力本当にありがとうございました!

では、紹介していきます。

【居酒屋】と【専門料理店】を経営しているAさん

「食材や飲料の値上げに本当に困っています。対策としては同じ食材を使い回せるようメニューを工夫してロスを減らしたり、その時々の安い食材を活用した日替わりメニューを強化しています。」

【ビストロ】オーナーシェフのBさん

「最近、直前になって来店を決める方が多い傾向なので食材の在庫がしにくいのですが、価格の安い時に多めに仕入れて在庫するよう心がけています。」

「また、日持ちするメニューを増やしたり、食材の使い回しがしやすい新メニューを考えたりで対応してます。」

【カフェ】店長のCさん

「食材や飲料の値上げは痛いです。お客さんの懐具合も厳しくなっているでしょうから、値上げには慎重になります。」

「値段は据え置きでポーションを少なくしたり、値段を高く感じないように、同じメニューでフルサイズとミニサイズを作って、選べるようにしたりしてます。」

【うどん店】ご主人のDさん

「うどん屋ですし“入りやすい店”が基本なので、ぶっかけや、ざるなど定番メニューは、値上げしていません。天ぷらうどんやカレーうどん、大盛の値段などをアップしました。それにしても食材や光熱費やガス代などの値上げが思った以上で、値上げが追い付かない状態です。」

「そこで、この秋に再値上げを予定しています。①お客様に喜ばれ②社会のお役にもたち③スタッフも幸せに暮らせる“三方良し”の値上げを目指してます。」

【居酒屋】大将のEさん

「昨今の原材料の値上げの連続にはなす術もなく本当に困っています。中でも小麦粉、天ぷら油、弁当の資材の値上がりは相当応えています。」

「また、電気代、ガス代の高騰もキツイです。メニュー価格に反映したくても食材と違ってお客さんの理解が得られにくいです。」

「値上げに関しては、他店と比較しやすいものは小幅の値上げに、例えば1,000円の定食はいっそのこと1,800円に値上げして別メニューに格上げしています。その代わり1,200円位までの価格で今までの1,000円定食を補えるメニューを作っています。」

「また、弁当の充実にも力を入れています。コロナでイートイン客が減った対策でもありましたが、弁当は作る時に一度に作るので、人件費やガス代などの光熱費を集約しやすいです。」

【レストラン】オーナーシェフのFさん

「食材の値上がりは影響ありますが、メインの肉や魚については、何年かかけて仕入れ先との独自のパイプを作ってきたので何とか耐えています。ただ、価格変化の大きい魚や貝などは安い時に多めに仕入れ、急速冷凍機を使って保存して使っています。」

「ウチの場合、値上げの影響が一番大いのは、春あたりからお客さんが減ったこと。8月はコロナ第7波とも重なったせいか、かなり悪かったです。10月からは常連さんへのハガキDMに力を入れていこうと思います。」


土屋先生からの一言

地域密着のお店の対策、いかがでしたでしょうか?

共感できる部分や参考になった部分が少しでもあったのなら幸いです。

ただし、この流れは続きますので、今後は目の前の状況に対応するための“対症療法”的な策だけでなく、諸々のコストアップを吸収できる、メニューの抜本的な改革が必要と思います。

その際、重要なのは「原価がアップしたから、値上げをしよう」ではなく、

「値上げではなく、魅力アップをする」

というスタンスで考えていただければと思います。

※コラム32話66話91話なども参考にしてください


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