第103話 機会を逃す

今回は、知らず知らずのうちに、チャンスを逃してしまっていた2軒のお店の話をしたいと思います。あなたのお店が、いつも満席とか、数ヶ月先まで予約でいっぱいとかじゃない限り、チェックしてほしい内容です。

絶好の機会を逃したお店

まずは、個人的に親しかったあるお店の店長から聞いた、驚くべき話を紹介します。結構前の事ですし、その店長もすでに辞めているので、このコラムを読んでいただいている方だけに、こっそり(?)お伝えしたいと思います。

そのお店、店名を聞けばご存じの方も多い、某有名ナショナルチェーンです。

ある時、そのチェーンがテレビの情報バラエティ番組で紹介されることになりました。しかし、店長によればその放送日時が名古屋の某店に伝わったのは、テレビ放送の前日の夕方だったそうです。全国ネットの人気番組で取り上げられるのだから、翌日以降の増客は確実でした。

いつものスタッフだけでは、とても対応できるものではありません。大慌てでシフトの入っていないアルバイトなどにも声を掛けたそうですが、限界があります。

案の定、テレビで紹介された翌日は大混乱。お客さんは待たせるわ、オーダーミスが続出するわ・・・怒って帰られたお客さんもあったそうです。

どこに問題があったのかは、今となってはわかりませんが、事前にきちんと伝わっていれば、しっかり準備をしていい状態でお客さんをお迎えできたはずだと思います。

人気テレビ番組で取り上げられるという、絶好の売上アップ・知名度アップの“機会”を、そのチェーンの名古屋の某店では“逃して”しまいました。

それだけでなく、お店のイメージもダウンし、現場の士気も下がってしまったのです。非常にもったいないお話。

機会を逃し続けていたお店

もう1軒は、コロナ前、地方出張の際に訪れた、美味いと評判の蕎麦屋の話。

お昼時、土地勘のある地元の方にお店に連れて行っていただいたのですが、入り口で思わず立ち止まってしまいました。

なんというか、まったく営業している気配がない!

「あれ?今日定休日だったっけ?」案内してくださった方も困惑顔。

営業中かどうかの表示がなく、店内も見えないつくりになっているので、中の様子は分かりません。さらに、暖簾や店先の置き型看板やのぼりの類いもまったくなし。

でもせっかく来たのだから、ということで、入口の引き戸を開けてみました。

すると「いらっしゃいませ~」の明るい挨拶。賑わいのある店内。外とは大違いでした。

蕎麦は、評判どおりとても美味!しかし、駅近の、いい場所にもかかわらず、お昼のピークタイムでも満席とまでは行かない様子。

この場所で、この味で、この価格ならもっと人気があってもいいと思うのに・・・

最大の原因はやはり、営業中かどうかはっきりしない、お店の入り口・外観

にあると思われます。

躊躇したのはほんの2-3秒ですが、その数秒で、前を通る人の何割かは『休みかも?』と思って他のお店に行ってしまうでしょう。

これら二つの例は極端かもしれないですが、皆さんが意識していないところで、これに似た事はあるのではないでしょうか?

例えば

「今日は店前の人通りが多いな、と思ったら近くでイベントをやっていた。」

「今日は来店も問い合わせも多いな、と思ったら、グルメサイトのランキングで上位になっていた」

「今日はやたらと○○に注文が集中するな、と思ったら昨日テレビで○○特集をやっていた。」                         等々

こういう事は、周りの動きに気をつけていればある程度つかめると思います。

あるいは、

「入ってみたら意外にいいお店ね!」と言われたことはありませんか?

これは決してほめ言葉ではありません。『あなたのお店、中に入ってみたい雰囲気じゃないですよ。』と注意されているのです。

さらにやっかいなのは、多くの場合“機会を逃している”事に当事者が気づいていない、という点。これが実は恐いんです。

WHOの発表によれば、今月8日から14日までの1週間の我が国の新規感染者は139万5千人を超え、4週連続で世界最多となったとの事。この状況が飲食店の利用にまた悪影響を与え始めています。

今時は残念ながら、外食行動にプラス要因は多いとは言えません。数少ない“機会”を“逃す”事のないようくれぐれもご注意ください。

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■土屋先生からの一言

日々営業をしていると、お客さんの波はあるものです。長年ご商売をされていても読めないこともあるでしょう。

しかし、ある程度予測できる波は必ずあります。この波をつかまえて最大限売上につなげてください。

また、お店の外観や入口が入ってみたくなる雰囲気になっているか、常にチェックしていただければと思います。


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