第95話 No.2戦略

今回は、人口25万人ほどの地方都市のさらに郊外に立地する中華料理店さんの話をしたいと思います。数年前、あるセミナーで講師をさせていただいたのをきっかけにご縁ができたお店です。

セミナー終了後にご主人と少しお話をさせていただいたところ、最近強力なライバル店が進出してきたらしく、一度お店をみて欲しいとの事でした。

日を改めてお店におじゃましたところ、規模も売上も地域一番といっていい中華料理店。一度会ったら忘れない、個性たっぷりの魅力的なご主人が経営する個人店さんでした。

しかし、ここに来て安さやお得さを武器にした、大手チェーンが進出してきて、情勢が変わってきたのです。

低価格戦略は、地域密着のお店の泣き所です。価格競争は規模の大きいところが勝つのが定石。それまで、地域一番店として、価格影響力、価格決定力を持っていたこのお店も、大手チェーンの激安攻勢と、資本力に物を言わせた広告&販促力に、正面からぶつかっては分が悪い。

店内をすみずみまで見せていただき、オススメの料理もいただきました。どの料理も美味しく、ほとんどすべてのメニューの量が多い。これは地方の特に郊外店でははずせない要素です。

なかでも驚いたのは、料理の出の早さ。しかも、熱々!特に中華にはこのアツアツ感は大切です。そして、料理の出が早ければ、お客さんの回転も早くなり、売上アップに直結します。

ご主人の自己評価も同じだったようで、人懐っこい笑顔を見せてくださいました。

しかし、すぐに元気のない顔に戻り、

「ですからねぇ、ライバルが出てきても絶対負けない、という自信があったんですよ。

長年ここでやっているし、地元の生まれだし・・・ でも、今回出てきたお店はちょっと勝手が違うんです。」

最近の実績を見せていただいたが、確かに客数が落ちている。売上も下降気味。

私はご主人にこうお伝えしました。

「ここはひとつ【No.2戦略】でいきましょう。」

このお店は今まで、地域で一番大きなお店を構え、個性的な新メニュー開発はほとんどせず、お子さんからお年寄りまで楽しめるオーソドックスなメニューを幅広く取り揃えていました。

いわゆる、典型的な1番店戦略で、これまではそれで良かったのです。しかし、今回は勝手が違いました。

地域で一番でも、全国で比べれば相手は巨大チェーン。価格競争では勝てません。

そこで【No.2戦略】

【No.2戦略】とは一言で言えば、差別化戦略

価格以外で、チェーン店にはない魅力づくりを明確にすること。つまり、地域密着のお店ならではのメニューや、お客さんとの関係作りに力をいれることにしたのです。

まずは『メニュー分析』

結果、どれも美味しいと人気ですが、中でも餃子の人気は頭一つ抜け出ていました。私もいただきましたが、美味い!そこで、この餃子の上位メニューを作っていただきました。鹿児島黒豚を100%使用した○○(店名)餃子です。これはその後大いに人気になり、コロナ禍で始めた、お取り寄せ(通販)の看板商品にもなっています。

そして次に『接客の充実』

地域性もありますが、地方は一般的にお店とのコミュニケーションを好む傾向にあります。これまで以上に、接客時のお声がけや気配りを徹底しました。今時は店内でのスタッフの声がけは控えめな傾向にありますが、このお店の常連さんはコロナ禍でもスタッフにどんどん話しかけてくれます。常連客中心の、地域密着のお店ならではです。

さらに『地域への積極的な貢献』

それまで気が回らなかった、地域の行事への積極的な関わりや、地元の草野球チームや、お稽古事の会、子供会などにもアプローチし始めました。元々顔が広いご主人ですから、この辺りもスムーズに進みました。

さらにさらに、『お店を核にしたコミュニティづくり』

釣り好きのご主人主催の「海釣りツアー」の開催!

どれもチェーン店より地域密着のお店が強みを発揮できる分野です。

元々地域一番店なので、一旦落ち込みかけた客数も売上も比較的早く回復しました。

ご主人がしみじみおっしゃいました。

「土屋さん。これでいい、と思ったらダメなんですね。もう、ウチの店はずーっと二番手と思っときますわ。」

あの人懐っこい笑顔が戻ってきました。


【土屋先生からの一言】

このお店は自らをあえて、二番手と位置づけ、差別化戦略をとりました。地域一番の座を守るのではなく、挑戦者として戦いを挑みました。

あなたのお店はいかがですか?業績がダウンしたまま、昨日と、先週と、先月と、同じ事をついやっていたりしませんか?

セルフチェックを怠らないでいただければと思います。


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