第92話 接近戦

今回は、業績好調な個人経営の居酒屋さんを紹介したいと思います。席数40席弱、駅から徒歩7-8分、郊外の住宅街に立地する和居酒屋です。

ここ2年は本当に苦労されましたが、鮮魚だけでなく、肉料理の比率をアップさせたり、食事メニューを増やして、ランチやテイクアウトにも力を入れ、何とかしのいできたお店です。

比較的コロナが落ち着いている、この4月以降は夜のお客さんが順調に増え、GW明けも好調は続いているとの事。

創業5年ほどの居酒屋さんが、なぜ、このように堅調な業績を残せているのか?ということなんですが・・・

料理は確かにレベルが高く美味しいですが、ここでしか食べられない!というほどではなく、いわゆるオーソドックスな居酒屋メニューといえます。

また、安さで勝負するようなお店でもありませんし、割引もめったにやっていません。店構えもどちらかというと、初めての方には入りにくそう(高そう)な印象を与えます。

実際は平均客単価¥3,500~4,000円程度の普通の居酒屋さんと言っていいでしょう。

確かに、イメージづくりは美味い。内装のセンスもよく、雰囲気、接客も平均点以上です。そして、お店のホームページも魅力的。今はSNSに力を入れていますが、グルメサイトなども結構活用していました。

オシャレなお店を作って、カッコイイWebサイトを作り、ネットを活用してサクッと集客。パッと見は、そんな感じのお店です。

でも実際は違うんです。それだけではありませんでした。

今時、「料理」や「接客」や「雰囲気」が優れているからと言って、繁盛するとは限りません。また、ネットを活用しているからと言って、年間を通じて安定した集客ができるとも限りません。実はこのお店ならではの、外からは見えない“戦い方”があったんです。

その方法とは、

①連絡先を教えていただいている、“常連さん”には、定期的にDMを送っている

②月1回、スタッフ手作りのチラシを周辺地域にポスティング

③ご主人は、お店にいる時以外は全ての時間(と言っていいほど)人に会い、
人脈づくり・仲間づくり・情報交流をしている

こういう地道でアナログな努力があって、このお店の安定した業績は作られています。

あるいは、コロナ禍で、来店客が激減した時期も、お客さんとのつながりは保ち続けることができていました。

・美味しい料理を、心のこもった接客で提供する
・お店の情報を常に情報発信する

これは、どのお店もやっていると思います。あるいはやるべき事。

そのうえで【接近戦】がとても重要なのです。

そして【接近戦】こそが、地域密着のお店が強みを発揮できるカギです。

新型コロナウィルスの感染拡大が世界的に広がって2年以上が経ちました。長期にわたる様々な行動制限によって、私たちの価値観も大きく変化してきています。

以前、このコラムでも書きましたが、一般的に外食機会が減る中『久々に外食するなら間違いのないお店で』ということで、老舗や有名店が選ばれています。これらのお店はコロナ禍でも堅調なお店が少なくありません。

しかし「せっかく外食するなら〇〇さんのお店で」.という選択も全てのお客さんではなないかもしれませんが、重要なファクターになるはずです。このお店の堅調ぶりがそれを物語っています。

最近近くに用事があったので、ちょっとのぞいてみたところ、その日もほぼ満席のようでした。ご主人も忙しそうにされていましたが、少し話をすることができました。

「土屋さん、ここのところ夜は満席が続いて、体中バキバキですよ。長い間楽してましたからね~」

彼の“満面の笑み”を久々に見る事ができました。

【接近戦】ますます重要です。


【土屋先生からの一言】

料理や、おもてなしや、店主のキャラクターなどに、飛び抜けたものがあれば、他の部分が多少欠けていても許される時代はありました。

今もそういうお店はたしかにあります。でも、安定した業績を長く残すには、

【接近戦】は欠かせません。

「今はコロナ禍だから、接近戦はちょっと・・・」と思っている方がいらっしゃったら、その考え方、まずいです。フツー過ぎます。もっと“やわらか頭”で考えてください。

「コロナ禍でもできる接近戦は何か?」という方向で考えていただければと思います。

コラム71話 などは一つのヒントになるのではないでしょうか


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