第47話 リスト収集の先にあるもの

顧客リストを集めましょう!私がいつも口にしているセリフです。このコラムでも事あるごとにお伝えしてきました。

そして、ある程度顧客リストが集まってくると、“あること”が起こってきます。今回はそんなお話です。

“あること”とは、集めた数字ばかりを意識してしまう事。

「この1ヶ月で、100人の顧客リストを収集した」とか「メールが送れるお客さんが、500人になった」なんて話をよく聞きます。

数値目標はもちろん必要です。私も『DMが送れる人数は席数の20倍を目指しましょう』とか『LINEのお友だち追加なら千人が目安』なんて数字もお伝えしてきました。

しかし、しかしです。私が言うのもなんですが、そもそもなぜ顧客情報の収集をするのでしょうか?

お客さんとこれからもお付き合いしていくためですよね。お店を忘れないでいてもらう、できればより身近な存在と思ってもらうために、お知らせを送る。そのためには顧客リスト収集が欠かせません。

しかし、これからお客さん人一人一人と良い関係を築いていこう、という時に“300人のリスト客”とか“1,500人のメール会員”といった意識でお客さんをとらえていると、お客さんとの距離が中々縮まらなかったりするものです。

昔、ある経営者からとても感慨深い一言をお聞きしました。

「“お客さん”という人はいないんですよ。」

「!!!」私の目からうろこが落ちた瞬間です。

そうなんです。“お客さん”というのは、お店を利用してくれた顔も名前も性格も違う、お一人お一人を足していった結果の数字です。○○さんや××さん達の事をまとめて呼ぶのに不便だから、便宜上“お客さん”という総称を使っているだけなんです。

新メニューや、新サービスなどを考える時には、300人の常連さんに向けてとか、1,500人のメール会員に向けてとか、考えていると、どこか他のお店でもやってそうなものになってしまい、結果として誰にも受けない、何て事にもなりかねません。

「近所の会社に勤めている日本酒好きの○○さん」や「いつも賑やかな△△さん」「毎週末に大勢の仲間と来てくれる、□□さん」が喜ぶメニューや、受けるサービスは何か?という、発想をぜひしてください。

1日何百人・何千人を集客しなければいけない、チェーン店や大型フードモールならともかく、地域密着のお店にはオススメの方法です。

そうしていかないと、お客さんは、今や常態化した“宅飲み”から戻ってきてくれないかもしれません。


【土屋先生からの一言】

「はい、まずは枝豆どうぞ。茶豆です。」

「いいマグロをゲットしました!赤身を“ヅケ”にしておきました。」

「パスタはもちろん、ぺペロンチーノですよね。」

「土屋さんの好きな○○ビール、たっぷり冷やしてありますから。」

「土屋さんが絶対気に入るワインが手に入りましたよ~♪」

これはお店での会話じゃありません。全部友人宅での話。

私の好物を揃えてくれて、まさにいたれりつくせりの“おもてなし”です。

飲食店ならVIP待遇といったところでしょうか。

当然、料理の腕前はプロにはかないません。でも、こんな“おもてなし”は最高に魅力的だし、料理もお酒も本当に美味しく感じるものです。

それはなぜか?『自分だけを“おもてなし”してくれている』からですよね。

友人を家に招けば当たり前の事かもしれません。でもこれが“おもてなし”の原点だと思います。

ミシュランガイドの星付きのレストランでいただくフルコースより、親友の家でのパーティの方が満足度が高い事だってあるんです。

お客さんは、料理だけを楽しみに来ているわけじゃありません。誤解のないよういっておきますが、もちろん料理も大変重要です。でも、お店を利用する動機はそれだけではありません。特に夜の利用は、程度の差こそあれ、非日常の時間を楽しみたくてお店を利用することがほとんど。

そんな時に『こんなに私の事を考えていてくれたんだ!』と思えたら・・・

初めての方はぜひまた来たいと思ってくれ、常連さんはもっと常連になってくれるのではないでしょうか?

“お客さん”をどうやって集めるか?ではなく『○○さんや××さんを、どうやってもてなそう?』という視点で考えてみていただければと思います。

しかし、そうは言っても「お客さん一人一人の事を考えたおもてなしとかDMってどうすればいいの?」といった声もあることでしょうから、次回は【あなただけをおもてなし】の事例をご紹介したいと思います。


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