第46話 料理の注文が減ったワケ

今回は、私がなじみの居酒屋さんで体験した“ある事”をお話したいと思います。繁盛法則や集客ノウハウではないですが、放置しておくと、客単価や売上が下がり続けていくかもしれません。特に45歳以下の店主・オーナーの方は要チェックです。

そのお店は、創作料理が自慢の小さな居酒屋さん。久々に入ったら、お店の雰囲気が変わっていました。

いわゆる“和モダン”なお店に改装されていたんです。以前は昭和の香りがする、おじさん達のたまり場だったんですが、その日は若いカップルや女性の姿もちらほら。

お客さんは結構入っているんですが、ご主人なぜか浮かない様子。お客さんがはけた頃、彼が話し始めました。

「最近料理の出が悪いんですよ・・・」

どうもその傾向はお店を改装してからのようです。

ご主人(以下、主)

「黒板に書いてあるメニューしかたのまない人が多くて。」

土屋(以下、土)

「メニューを大きく変えたとか?」

主「ほとんど変えてません。メニューブックは作り変えましたけど。」

メニューブックを見せてもらって驚きました。なんとそこには・・・

え~、よく読めません。老眼モードになった私には、細くて小さな文字が並んでいるそのメニューを読むのは困難でした。

見た目は確かに、前よりかっこいいデザインになっていました。
しかし【かっこいいデザイン=文字を小さく】???
やってしまいがちなパターンです。

さらに“和モダン”な店内は、以前より照明が暗め。この“暗さ”も老眼には大敵です。

40代以下の若い人が中心のお店ならこのメニューブックで問題ないですが、このお店は、50代以上の“オヤジ”達の店。こんなメニューブックにしてはいけません。

これで原因がわかりました。

土「マスター、このメニューじゃ僕達は注文しないよ。というかできない。」
「黒板に書いてあるメニューしかたのまないんじゃなくて、それしかたのめないんだよ。」

主「えっ!?」

40代前半のご主人は、まだ“水晶体”が元気なようです。

常連さんがメニューブックをほとんど見ない、というのはよくあることですが、「見ない」と「見えない」は違います。

いまいち納得していないマスターが怪訝そうに言いました。
「でも、付き合いの長い常連さんなんか、言ってくれればいいのに。」

そういうもんじゃないんです。老眼で若干見にくくなったからと言って
『老眼で見えなくて』とはいいたくないんです。(特に50代半ば位までは)

色々頼みたいけど頼めない。文字のサイズに文句言いたいけど言えない。
結果、黒板に書いてある物しか頼まないといいうことになってきます。
付き合いの浅いお店だと、それがきっかけで足が遠のくことすらあります。

客単価が落ちるどころか、失客の危険もある!これは放置しておけません。

それからどうしたのか?作り変えたばかりのメニューブックをまた作りなおすのも大変です。※できればやって欲しいですが

土「ご主人、黒板をあと2-3個買いましょう。」

主「え、何するんですか?」

土「次にその黒板に、メニューブックの中から、いくつかピックアップして書き出してみて。」

主「え、でもメニューと黒板が同じじゃ・・・」

土「大丈夫、そんなことを気にする人はまずいないから。」
 「それに、ただ書き出すだけじゃなく、本当に人気のあるものや自信のあるものを選んで“当店人気ベスト5”とか“店主が選ぶおススメベスト3”みたいな感じで書き出してください。」

 「あ、もちろん、大きく見やすい文字でね!」

ご主人、半信半疑でやりました。で、どうなったか・・・

改装前より料理の注文が増え、お店は大忙しになりました。


【土屋先生からの一言】

あなたのお店のお客さんは、20代の方がメインですか?30代の方ですか?それとも・・・

もし、あなたのお店が45歳以上のお客さん中心なら、メニューブックは特に注意してください。完成前に、ぜひその年代の知人や友人に見てもらってください。見てもらうのはもちろん店内で。営業中と同じ明るさでお願いします。

せっかく料理が評判のお店でも、小さな文字のメニューブックと暗めの店内では、新しいお客さんにも、常連さんにも楽しんでもらえません。

テイクアウトも同じです。

お客さんにお渡しする、メニューやチラシ、さらにショップカード等々、情報を詰め込みすぎて、文字が小さく、見にくくなっていませんか?

メインの客層が“見やすい”文字サイズにしていただければと思います。

ピントが合わなくて文字が見にくいというのは、注文する気持ちを丸ごとなくしますので、くれぐれもご注意くださいね。


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