第91話 続・値上げラッシュ2022
先週に引き続き、多くのお店や企業にとって深刻な問題になっている、様々な分野での値上げにどう対処していくか、というお話をしたいと思います。
昨年の秋からの値上げが止まりません。しかもコロナ禍は続いていて、個人消費もまだ弱含み。このような状況を受け、7割近くの企業がコスト上昇分を商品やサービスの価格に転嫁できていないことが分かりました。
(2022年4月、東京商工リサーチ「価格転嫁に関するアンケート」調査より)
特に、飲食業においては80%以上のお店が価格に転嫁できていないとの回答で、平均を大きく上回っています。顧客離れへの懸念から二の足を踏んでいると思われます。
そこで今回は、普通の定食屋さんでも、昔ながらのうどん屋さんでも、価格改定や、客単価アップがスムーズに実施できるヒントをお伝えしていきたいと思います。
もちろん、これほど何もかもが上がってくると、一律値上げもやむなし、という状況かもしれません。しかし、仕入れのアップ分をきちんと反映できているでしょうか?
今までにも「うなぎ」や「小麦」の高騰や消費税率引上げの際、一律値上げをしたお店の多くは評判を落とし、しかも数字的には原価の値上げ分を充分売価に反映できてないという例を数多くみてきました。
やはりそこは、一律値上げだけでなく、メニューの魅力アップ・ブラッシュアップを図って、思い切った価格設定をしていく必要もあると思います。
全メニューとは言いません。メニュー分析(※)を行い、その上位メニューに絞って考えていただければOKです。
※メニュー分析の詳細についてはコラム第30話をご参照ください
魅力アップ&価格アップ成功のポイントは “非日常感”を感じられるメニューであることです。
私の経験上、取り組みやすく、成果の出やすい二つの方法をご紹介します。
まずは、
デカ盛り・ビッグサイズ
量や大きさ、というのはわかりやすい“非日常感”の演出です。ポイントは、お客さんの予想を超えた量や大きさを目指すこと。そういうメニューを提供することで、一定数のお客さんはいつもと違う体験にワクワクしながら、いつもよりお金をたくさん払ってくれるはずです。
ちなみに、二郎系ラーメンや、人気デザート「シロノワール」で有名なコメダ珈琲等も予想を超えたボリュームで人気も客単価も高目です。
また。お店ではないですが、カップ焼きそばの「ペヤング ソースやきそば超大盛シリーズ(超大盛、超超超GIGAMAX、超超超超超超ペタMAXなど)は、デカ盛りの成功例と言えます。
発売と同時に話題になり「ビッグ・特盛系カップ麺満足度ランキング」で、不動の人気を誇る「日清焼きそばUFO大盛」をおさえ、1位2位を独占したこともあるほど。
これほど突き抜けたデカ盛り・ビッグサイズになってくると、1個150円~200円が相場のカップ焼きそばとはジャンルが違ってきます。どちらにしようかではなくなってきます。1個500円、1,000円超えですが、売れていくんです。
次に、
縁起物
私たち日本人は一般的に、縁起物好きです。特に、先行き不透明な今「開運」「商売繁盛」「恋愛成就」等の“神仏のご利益”といった独自の付加価値が“非日常感”を演出します。
ある道の駅の屋台では、近隣の神社に奉納祈願した串を使った“開運五平餅”が、価格は他店より高めですが、圧倒的に売れている看板メニューです。
某和食店のランチでは、ランチメニューを一新!セットメニューを七福神にちなんだ7種類のご利益メニューを展開。(『A定食は弁財天おすすめの金運・財運アップメニュー』といったような形)これによってランチの客単価は15%近くアップ!お客さんも増えています。
すいか専業の農家さんで、それまで売れ残りがちだった、規格外に育った超特大のレアすいかを、めったにできないという事で幸運のすいかとして打ち出し ワンサイズ下のすいかの1.7倍の価格で販売したところ、あっという間に完売。
いかがでしょう。上記の方法でしたら、
“普通の定食屋さんや昔ながらのうどん屋さん”でも
“特定の利用動機に特化したこだわりの店”じゃなくても
取り組んでいただけるのではないでしょうか?
まだほかにもいろいろな切り口・アイデアがあるはずです。
あなたの店ならではの【値上げ=魅力アップ&価格アップ】をぜひ考えてみてください。
【土屋先生からの一言】
先週に引き続き繰り返しお伝えしますが、地域密着の飲食店は、“迷わず・恐れず”値上げをしてください!
ポイントは “非日常感”の演出です。
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