第82話 女性目線、男性目線
今回は、ちょっとした“ズレ”が業績に影響するというお話。
コンセプトや戦略など、経営の根幹にかかわるものではないですが、ここで“ズレ”が起きてしまうと、どれほど魅力的な料理を提供しても、業績はもうひとつなんて事があるので要注意です。
先日、あるお店から「新メニューの反応がイマイチなので、意見を聞かせてください。」という相談がありました。
今年に入ってこういったメニュー関連のご相談が増えています。原因は、昨年後半からの様々な値上げラッシュ及び、最近のロシアのウクライナへの軍事侵攻に端を発した、電気やガソリンなどのさらなる高騰。
何とか収益を改善させようと、メニューの見直しやブラッシュアップを検討しているお店は少なくありません。
今回の相談もまさにそんなお話でした。
問題の新メニューは「オマール海老のグリル」。元々人気の定番メニューでしたが、原価高騰につき、思い切って最もおいしいとされる一回り大きなオマール海老を使用。価格もアップしますが、食べ応えも魅力も大きくアップ!常連さん向けの試食会では好評でした。
しかし、いざスタートするとなかなか売れない、という事で今回のご相談になったのです。
私も試食させていただきました。味は申し分なし!サイズの違いでここまで美味しくなるの?といった印象。価格アップに見合う魅力アップができていると思いました。
さらに、新メニュー專用の1枚メニューや、お店のHPでの紹介などもチェックさせていただいたところ、何か違和感が・・・
このお店は、契約農家さんから仕入れている新鮮で安心な野菜をたっぷり使った料理が多いレストラン。かわいらしい外観や内装とあいまって、ランチもディナーも女性客で賑わうお店です。つまりこのお店のお客さんは女性。
こういうお店の場合、店名、外観、内装、メニュー、POP類、ユニフォーム等、すべての要素が、
【女性から見てどうか】
という視点でチェックされ計算されてなければいけません。男っぽさ、男くささはマイナス要素です。
で、このお店のオーナーシェフは男性。こういう場合、メニューを紹介する言葉や、写真の見せ方、メニュー名等でつい男性目線で考えてしまいがちな時があります。今回私が感じた違和感もまさにそこでした、
例えば、料理写真がボリューム感を強調し過ぎていたりとか、新登場記念で素敵なデザートもつくのに、写真もなく「季節のジェラート」の一言で終わっていたり、といったようなところ。
極めつけは「“ジャンボ”オマール海老のグリル」というメニュー名。
この名前で喜ぶのは男性がほとんどでしょう。
このお店のターゲットは女性なのですから、ボリューム感よりも、
サイズアップしたことでいかにおいしくなったのか
大きいサイズなので友だちとシェアして食べられる楽しさ
といったような点をしっかりアピールすべきだし、デザートにあんなに美味しいジェラートが付くのなら、写真は必須、といった事をお伝えしました。
指摘されれば単純なことなんですが、女性の目線や価値観を常に意識していないと、ついこういったミスが起きてしまうものです。
先日、知り合いのお店に立ち寄った時にも同じような事がありました。彼のお店は、ダイニングカフェ。このお店もまた女性に人気のお店です。
夜はお酒もしっかり売るお店でしたが、最近は、夜のお客さんがめっきり減ったので、営業時間も変更し、食事メニューの充実に力を入れているとのこと。
そんな折でもあり、ちょうど新メニューの話になりました。
オーナー「実は、牛肉のいい仕入先が見つかったんで、新しいメニューを始めようと思っているんですよ。」
土屋「へぇー、楽しみだね。どんなの?」
彼は得意げに言いました。
「○○牛をつかった、超厚切りの“でっかい”サイコロステーキをやろうと思ってるんです!」
なかなか豪快なメニューができそうです(^^;
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【土屋先生からの一言】
男性客メインのお店では“売り”になることも、女性客メインのお店では“マイナス”だったりします。
あなたがもし女性客メインのお店の男性オーナーだったら、ちょっとした“ズレ”が大きなマイナスになることもあるのでお気を付けください。
とにかくそんな時は、訊く事です。周りの女性に訊いてみましょう。きっと、あなたとは違う目線で指摘をしてくれるはずです。
逆の場合はどうなのか?私の知る限り、女性オーナーが経営している男性客メインのお店で、こういう“ズレ”はほとんどみかけません。これは女性ならではの親和力・コミュ力が高いから?あるいは我々男性が単純でわかりやすいからでしょうか(笑)
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