第73話 近隣の法則
年が明けて、新型コロナの感染拡大がまた始まっています。新年早々出鼻をくじかれた形ですが、ワクチンや治療薬など、私たちも新型コロナウィルスに対抗する武器が徐々に整いつつあるので、前を向いていきたいと思います。
今回は、こんな時こそ重要になってくる、地域密着の飲食店の集客の基本についてお話したいと思います。
皆さんもご存じのように、日本の人口は10年以上減少傾向にあります。2020年の国勢調査によれば、我が国の人口は1億2614.6万人。2010をピークに減り続けているのです。そして、2055年には1億人を割り込むと予想されています。(高齢社会白書2021年版より)
国内市場が縮小し続けることは間違いないということで、飲食業界では、新たな出店場所を国内から海外へと舵を切った企業が年々増加。
と同時に、インバウンド需要の取り込みによって、海外からのお客さんの需要を取り込もうという動きも活発化してきました。政府は2003年「観光立国」を宣言。インバウンドニーズの取り込みは国策となりました。そして2015年にはインバウンドがアウトバウンド(日本人海外旅行者)を逆転したのです。
さらに、ラグビーワールドカップが開催された2019年には訪日外国人数が過去最高の3,188万人を達成。主要観光地以外の地方都市でも外国人観光客を見かけることが多くなり、経済成長、地方再生の鍵として、官も民も「観光対策=インバウンド対策」を積極的に推し進めた結果、消費額は4.8兆円にものぼりました。
しかし、この流れは、新型コロナウィルスの感染拡大によって一気に断ち切られました。2020年の外国人観光客は412万人にまで落ち込み、2021年の上半期はさらに悪化し10万人を下回ってしまったのです。
※日本政府観光局データより抜粋
もちろん、大きな流れはあります。今後も感染が落ち着けばすぐにまた盛り返すかもしれません。しかし変動リスクは非常に大きいです。要するに私達の努力とかでどうにかできるものではない(コントロールできない)変動リスクなので、そこに頼りすぎるのは非常に危ういと思われます。
特に、地域密着の飲食店は1にも2にも、地元重視であるべきと思います。地元のお客さんで十分売上が確保できるようにしていくべきでしょう。
しかも地元重視の考えは広域商圏を相手にしたショッピングモールやデパート、あるいは道の駅といった施設でも、安定経営に重要な要素です。
以前、東京のとある巨大ショッピングモールのオープンに際し、トップから「首都圏はもちろん、甲府(山梨県の県庁所在地)までも商圏と認識している」という発言がありましたが、なんと、オープン2週間前には、ショッピングモールの周辺(徒歩圏内)のほとんどすべての事業所・店舗・住宅にあいさつ回りを実施したのです。私はそれを目の当たりにした時、鳥肌が立ったのを覚えています。そのショッピングモールはもちろん今も人気です。
また、私は中部地方の「道の駅」の経営指導の仕事にもかかわっていますが、比較的広域から人が集まる「道の駅」においても、業績好調なのは、遠方からの観光客よりも地元のお客さんをしっかりつかんでいる駅なのです。
地元重視は広域商圏を相手にしている大型店でも集客成功の大きな要因なのですから、地域密着のお店の集客には必須の考え方だと思います。
近隣の法則
私はそう呼んでいます。
要は、今店に来ている人、店の前を通る人、近所に住んでいる人or働いている人、に優先的・積極的にアプローチする。というもの。
しかし「地元を意識しているけど、なかなか上手くいきません。」というご意見というかお悩みも結構聞きます。
周辺にポスティングをしたり、道行く人にチラシを配ったりしたけどさっぱりだったので、もうやめた。という方も結構あったりしますが、多くの方が勘違いしているのも事実です。
要は、最初からお客にしようと思っているから、上手くいかないんです。まずは人間関係づくりが大事。いきなり「お店に来てね」と言っても難しいものです。地域の行事に積極的に参加したりして、まずは親しい人を作ることから始めてみてはいかがでしょう?
声をかけてお店に来てくれるのは、親しくなっているから(=相手から好意を持たれているから)できることです。
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【土屋先生からの一言】
大事なことは、「地域の人を集客しよう」ではなく、「地域の人と親しくなろう」という気持ち。まずはそこからはじめていただければと思います。
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