第122話 はじめの一歩
お店が苦戦している時、このままではまずい!と思っていてもなかなか行動に移せない事ってあるのではないでしょうか?
今回は、何を言っても動こうとしなかったあるお店のご主人がやっと行動を起こした“きっかけ”の話をしたいと思います。参考にしていただければと思います。
そこは、オフィスや商店が密集している最寄り駅から徒歩6-7分の場所にあるお店です。乗降客数も店前の人通りも比較的多い、中々の好立地。
ご紹介するのは、そんな立地で、赤字と黒字を行ったり来たりしていた40席ほどの居酒屋さんです。
料理はいける、接客もまずまず。そして、日本酒の品揃えは◎(いかにも酒好きが選んだという感じ)
30代後半から50代の男性客が圧倒的に多く、いわゆる“のんべえ”に愛されているお店です。中には毎週利用してくださる常連さんも少なくないのだとか。
そんな“イイお客さん”を結構抱えていたお店ですが、コロナの影響で売上は激減。赤字が続き、さすがに追い込まれてきたとの事で、ある方からの紹介で私にご相談がありました。
ただ、紹介者(酒屋さん)の話によればご主人はかなりの頑固者で、今までもいろんな方からの助言や参考意見にほとんど耳を傾けなかったとの事。
ご主人(以下「主」)
「売上の波がとにかく激しいんです!昨日なんかお客さん1人でした。売上も全体的に下がってきています。同業仲間ではテイクアウトとか始めていますが、あれはうちの店では違うと思っています。お店にお客さんを呼び込める何か策はありませんか?」
最初にまず『テイクアウトやデリバリーはやりませんよ。』と釘を刺されたような感じでした(^^;
ともかく私は、繁盛の二大法則である
「お店のブランド化」と「お客さんとの定期的な接触」
をふまえた、具体的アドバイスをお伝えしたのですが、ご主人の反応はイマイチでした。
主「今は緊急事態なので、もっとこう、即効性のある策はないですか?」
土「緊急事態だからこそやるべき事なのですが・・・」
ご主人はなかなか首を縦に振ってくれません。
そこで私は、抜本的な改革以前に、取り組むと効果的な策をお伝えすることにしました。ただし、この手法はお客さんがさっぱり来なくなってしまったお店には効きません。このお店のように売上の波が激しいお店の集客を安定させることは可能です。ただし、売上&集客アップの効果は限定的です。
しかし、比較的早く効果が出ることが多いので、お店のモチベーションは結構上がります。
その方法とは、
「金額(売上)を人(お客さん)に置き換える」
というもの。
例えば、
月200万円の売上で収支トントンのお店で、営業日数が月25日の場合、
1日の損益分岐点売上高は8万円 となります。
さらに、客単価が4,000円だったとしたら、8万円÷4千円=20
1日20人
がこのお店のいわば「損益分岐点客数」
※ランチとディナーでメニューや客単が変わる場合はそれぞれ出してください
「1日に8万円売らなきゃ」というより「1日に20人来てもらおう」という方が、どんな手を打てばいいかイメージしやすくなると思います。
こうして【1 日20人のお客さんに来てもらおう】という目標ができると、「常連の△△さんが、友人の送別会をやるといっていたので、連絡してみよう」といったような、具体的な行動が起こしやすいもの。
客単価はお客さん次第なので、金額ベースよりやや大雑把にはなりますが、新人アルバイト君などにもわかりやすいはずです。
私はご主人に、
「まずはこれを実行に移してみてください。一気に業績回復!とまではいきませんが、毎日の売上・客数の波がかなり小さくなるはずですよ。」
とお伝えしました。
するとそれまでほぼ無反応だったご主人がやっと反応してくれました。
主「なるほどこれはいい!やってみます。」
それから3週間ほどが経ち、久しぶりにお会いしたご主人は以前より元気そうでした。
主「おかげさまで、本当に売上の波が小さくなりました。もう、1日のお客さんが一桁という日はめったにありません。」
この後、ご主人は【はじめの一歩】を踏み出した方が、決まって私に問いかける“あのセリフ”を口にされました。
「土屋さん。次は何をすれば良いですか?」
【土屋先生からの一言】
このままではまずい!と思っているのに動けない。そんな時は、まずはあなた自身が取り組めそうなことをやってみてください。たとえ成果が小さくても、まわり道に見えても、それがきっと成功への近道になるはずです。 あなたも【はじめの一歩】を踏み出していただければと思います。
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