第104話 暑サニマケズ寒サニモマケズ
朝晩は秋の気配もやや感じられますが、私が住んでいる名古屋は、日中はまだ危険な暑さが続いています。
こんな時期は、冷やし中華やそうめんのような、ひんやり&さっぱり系の食べ物が食べたくなりますよね。
そこで今回は【季節指数】(※)の変動が大きいお店、例えば、鍋料理専門店など特定の季節に特にニーズが高まるお店のお悩みに関しての話。専門店ではないけれど、冷やし中華が凄く人気とか、鱧料理が看板メニューのお店なども参考にしていただけると思います。
※季節や月ごとの自然現象や社会習慣による売上高の変化を指数化したものの事
そういうお店は特定の季節が終わると集客に苦戦するケースが少なくないですが、対策を考える上での注意点をお伝えしたいと思います。
まず始めに、季節によって売上の変動が大きいお店(特に専門店)が、売上アップを考える場合、一番に取り組むべきは、強い時期に徹底的に売ることです。しかし、このコロナ禍においては、オンシーズン(いわゆる稼ぎ時)に必ずしも大きな売上がつくれるとは限りません。
そこで、弱い時期も何とかしないと経営的に厳しいという事になるのですが、ここで対策を間違えてしまうと、苦戦が続いてしまうので注意が必要です。
対策の方向性としては、人気メニューが弱い時期なのですから、販促での集客は期待薄です。値引きも特典も好反応は望めません。
ここは、夏らしいor冬らしい新メニューの開発~投入が効果的と考えがちですが、
ここでも注意が必要です
一般的に、お客さんはメニューに対して保守的です。珍しいもの、新しいものは中々受けません。今や夏の定番メニューとなった冷やし中華も、昭和初期に誕生したにもかかわらず、全国に広まったのは戦後といわれています。
具体例を見てみましょう
Case1:ちゃんこ料理専門店の「ひやしちゃんこ」
ご主人は元大相撲関係者で、寒くなってくると、アツアツのちゃんこ鍋を目当てにたくさんのお客さんが連日足を運んでくれるお店。しかし、夏はガラガラになることも結構ありました。ご主人渾身の新メニューが「ひやしちゃんこ」。しかし注文が全く入りません。
「ひやしちゃんこ」はシーズン途中で終了。その後は原点に帰って、夏でもアツアツのちゃんこ鍋で勝負することを改めて決意し、それまでこのお店で地味な存在だった塩ちゃんこ鍋を「夏ちゃんこ」としてアピール。女性の常連さんのアドバイスでスパイシーなハーブもアクセントに入れ、これが人気メニューに成長!夏の売上の凹みも小さくなり、コロナ禍の今も元気に営業中です。
Case2:味噌煮込みうどん店の「冷やし煮込み」
大将が夏場の苦肉の策として考えたのが「冷やし煮込み」。全く売れず、即・販売終了。そのお詫びもかねて暑中見舞いを送ったところ、多くの常連さんがきてくださり、毎年苦戦する夏としては最高売上に!その後はご主人のキャラを前面に打ち出したDMを出し続けています。
さらに、夏バテ防止や免疫力アップのアピール。希望者には“たまご1個プラス”や“ねぎ増量サービス”等も実施。夏でも味噌煮込みが売れるお店になりました。
Case3:蕎麦屋の「・・・」
メニューはざるそばともりそばのみ、冬でも温かい蕎麦は出さない。というこだわりのお蕎麦屋さんの話。美味いと評判の人気店ですが、やはり冬は客足が鈍ります。ある時お店の近くにうどん店が出店してきました。うどん店と言っても、そばも丼物もカレーライスまである、何でもありの麺類食堂です。冬ともなれば、鍋焼きうどんを大きくアピール。天ぷらそばや鴨南蛮そばといった、温かい蕎麦メニューも充実していました。
しかし、こだわりの蕎麦屋は、変わらず毎日早朝から手打ちしている蕎麦を黙々と提供していました。その後、そばの美味しさや店主の姿勢に感銘を受けたお客さんから口コミが広がって、SNSでも話題になり、冬でも人気のお店になっています。
土屋先生からの一言
“暑い時期の鍋料理”や“冬場の冷やし中華”などは一般的には敬遠されがち、と思ってしまいますが、地域密着のお店の場合、お客さんの多くは“暑いから”とか“寒いから”という理由だけでお店に来ているわけではありません。
料理の美味しさ、質の高さはもちろんですが、あなたのお店でしか味わえないor経験できない魅力があるから来てくれているのです。
【暑サニマケズ寒サニモマケズ】
ぶれることなく、自慢のメニューを堂々と打ち出していただければと思います。
さらに「さっぱり」「免疫力アップ」「夏バテ防止」さらには「店主の“こだわり”」等、お客さんを“その気に”させる要素をメニューに盛り込めれば言うことありません。
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