第100話 つながり力

このコラムが、2020年8月の連載開始から通算100号を迎えることができました!

これもひとえに読者の方々の応援や、支えてくれている仲間のおかげです。本当にありがとうございます。これからも皆さんのお役に立てるようなコラムをお届けしていくつもりですので、引き続きよろしくお願いいたします。

前回までの4週にわたって、コロナ禍がもたらした「価値の大転換」への対応や、コロナ禍で一層重要性が増した「不変の価値」にいてお話してきました。繰り返しますが、

1.テイクアウトやデリバリー等の「価値の大転換」への対応

2.“ブランド化”や“定期的情報発信”等「不変の価値」への対策

は必ず進めていただければと思います。

※詳細はコラム96話99話ご参照ください

上記の2点は地域密着のお店がコロナ禍を勝ち抜くためにぜひやっていただきたいことなのですが、お店にヒアリングやアドバイスをしていく中で、ある事に気づきました。

それは、「価値の大転換」への対応や「不変の価値」への対策が十分ではないお店でも、まずまずの売上を手堅く作っているお店が存在していた、という事実です。そして、それらのお店の経営者にはある“共通項”があったのです。

先日、あるお店に久々に立ち寄って、そのことをあらためて実感したので、今回お伝えしたいと思います。

そのお店は、名古屋の繁華街にあるワイン居酒屋です。7月上旬のとある日曜日、久々に会った友人を連れて行った時の事。時間は夜の9時を回っていました。日曜夜9時過ぎの名古屋の繁華街は平日や土曜に比べ、比較的人の少ない時間帯。にもかかわらずここは空席待ちのお客さんが店の入り口付近にあふれていました。

前もって予約を入れておいたので、待たずに入れましたが、店内はお客さんでびっしり。実はこのお店、オープンから10年以上、業績好調な人気店です。

コロナ禍においても、一時的な落ち込みはあったものの、熱烈なファンに支えられて売上は堅調。

でも、テイクアウトやデリバリーといった「価値の大転換」への対応はしていません。また“ブランド化”はかなりできていますが、“定期的情報発信”はまだまだといったところです。

しかし、連日多くのお客さんが訪れるため、営業時間中のピークである午後6時から9時の間は電話予約も中止するという人気ぶりです。

このお店、料理もお酒も、スタッフの魅力もハイレベルですが、中でもとびぬけているのが、オーナーの人を巻き込んでいく力、人とつながっていく力です。

近隣の飲食店に声をかけて、一緒に新感覚の名古屋めしを共同開発し、各店同時に新メニューとして発売する活動を展開したり、自店で人気になったメニューを地域の食を盛り上げるため、新名物として広げることを意図し、一定のルールを守れば各店でアレンジ自由という形にして、現在20店舗ほどが、新名物の普及拡大に参画したりしています。

このお店ほどではないですが「価値の大転換」や「不変の価値」に十分対応できていなくても業績堅調なお店は他にもありました。

コロナ禍でも手堅く売上げを作っているお店の“共通項”とは?

毎日1-2時間、商圏内を散歩して、顔見知りに合えば挨拶している

地元の草野球チームをバックアップしている

町内会の役員を長年務め、地域の防災やまちづくりにかかわっている

地域の人たちを巻き込んで、地元の盛り上げに取り組んでいる

地元の同業者仲間に声をかけて、2か月に1回勉強会を続けている。

等々

これらのお店に共通しているのは地域との結びつき、いわば“つながり力”の強さ。

テイクアウトやデリバリーの売上が低くても、ブランド化や定期的情報発信がイマイチでも、地域との結びつきが強いお店は、比較的堅調。

あなたならではの“つながり力”できるところから発揮していただければと思います。


■土屋先生からの一言

あなたのお店、いえあなたの“つながり力”はいかがですか?

要は“つながり力”があれば、

テイクアウトやデリバリー等の「価値の大転換」への対応 や

“ブランド化”や“定期的情報発信”等「不変の価値」への対策

への取り組みがまだ十分でなくても、手堅い売上がつくれるという事なのです。

誤解のないよう、もう一度言いますが、

「価値の大転換」への対応や「不変の価値」への対策

にもしっかり取り組んでいただく事は、くれぐれもお忘れなく。


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