第57話 集客UP実況中継―継続は力(後編)
先週に引き続き、10年で売上を倍にしたある高級和食店さんの話を紹介したいと思います。
今回は集めた顧客リストをどう活用しているかというお話をしたいと思います。
※どうやって顧客リストを集めたかについては、コラム第56話をご覧ください。
このお店は、約6年で6,000人分のリストを獲得しました。6,000というと集められそうもない数字に聞こえますが、1年で1,000、1日にすれば3名程度という数字。決して無理な数字ではないと思いませんか?
ここでは「1年以内の来店客」、「2年以内の来店客」「その他」の3つに区分して管理しています。計画的にDMを送るようになって、売上の波がなくなり、接待中心のお店でありながら、景気に左右されなくなりました。
毎月1000枚から3000枚のハガキを、1~2年以内の来店客を中心に送っています。高級和食店でハガキ?と思われた方もあるかもしれませんね。
しかし、これが正解。情報洪水の今時、わざわざ封を開けて見るのは、親しい人からの手紙か、請求書ぐらい。店名を見ただけで、喜んで開けてくれる関係になるまで、高級店でもハガキDMをおすすめします。
毎月送るDMの主な目的は、セールの告知等ではなく、お客さんとの信頼関係を作りそれを保つためのもの。ですから、来店のお礼状だけでなく、1~2カ月に1度の頻度で、季節の挨拶だけを目的としたハガキを送っています。来店を促す内容は一切書きません。
新メニューのお知らせなどの、いわゆる販促のDMは年4回と決めています。
例外は、一部のお客さんだけに送る誕生日や記念日向けの特別コースを提案する封書。毎月40~60人の「誕生日」や「記念日」を迎えられた常連さんに、特別な会席コースの提案を封書で送っています。
文面はすべて手書き。封書を受け取った方のうち、少ない月でも4-5組、多い月には15組ほどのご利用があります。以前は印刷したものを送っていましたが、毎月50通ほど送って1~2組の来店しかなかったそうで、手書きの威力は絶大です。
なお、毎月送っているハガキも、宛名や、書き添える簡単な挨拶文をすべて手書きにしています。毎月1000枚以上のハガキを手書きするため、料理人も含めたスタッフ全員で手分けして行っています。
職人気質の高級和食店の板前さんが、仕事が終わってから、宛名書きをする・・・「お客さんとの定期的な接触」の重要性がスタッフ全員に浸透しているからこそできること。また、皆をその気にさせたご主人の努力の賜物といえるでしょう。
お客さんが飲食店に来なくなる最大の理由は「何となく」。なので、お店を忘れさせないために、季節の挨拶を定期的に送ることは効果的だしやるべきです。
また、売り込み目的ではないハガキには、しばらく利用していなくて、お店に来づらくなっているお客さんに「ご無沙汰ですけれどお店は気にしていませんので、またいつでも来てください。」と伝える効果もあります。
この感覚はお客さんとお店で結構ギャップがあったりします。
お店は「○○さんしばらくご無沙汰だな~」と気にかけているのに、お客さんは「しばらく行ってなくて、何か申し訳ないな~、気を悪くしてるんじゃないかなぁ」と気に病んでいることが多いもの。
実際このお店でも、あるお客さんが久々に来店し、笑顔でお迎えしたところ「また来てもよかったんだ」と喜んでくれたとの事。ご主人もこの感じ方の違いに驚いたそうです。
最後にご主人の言葉をご紹介しておきましょう。
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6年間DMを出してきて思うのは、やれば必ずリピートは増えるという事でした。
値段ではなく、お客様に価値さえ分かって頂ければ、頑張れます。値下げや安売りは考えられないと思います。
お客さんの情報ですが、接客係のお客様とのたわいもない話から、本音の部分をどう知るかが一番大切。
さらに、クルマの車種、かばんや靴のメーカー、趣味なども顧客カルテに書くようにしています。それでその方のライフスタイルが見えてきます。
売り込みのないハガキを毎月送りながら、誕生日や記念日の特別会席の案内状をお客様の情報をもとに送れば、自分の好きなものばかりが入っている献立を見て、かなり多くの方に来ていただけます。
これも長年、お客様の情報を集め続け、お知らせを送り続けてきたおかげと思っています。
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【土屋先生からの一言】
2週にわたってご紹介した、10年で売上を倍にしたお店の話、いかがでしたでしょうか?
まさに“継続は力”です。
このお店はハガキや封書で成功しましたが、SNS等でも、基本的には同じです。気の合う“フォロワー”や“友達”を地道にコツコツ集めて、定期的に売り込みではない情報発信をしていく。そしてタイミングを見て個別にメッセージを送ってお誘いする。
中々会えないこんな時だからこそ、こまめな情報発信でつながりを維持するor距離を縮めることがとても大切です。
あなたのお店でも取り組んで、そして“継続”していただければと思います。
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