第55話 水平展開・垂直展開

ビジネスをやるうえで、知っておいていただきたい考え方です。

例えば、チェーン展開などは水平展開の代表例。1つの店舗が当たったら、同様のお店を他地域に出店して規模を拡大していくという考え方。

一方、垂直展開は、店舗を増やすのではなく、1つのお店を強くしていくこと。スタッフの増強や、値上げや、コストカット等をして、売り上げや収益を積み上げていく考え方です。

実はこれ、お店のメニュー開発にも応用できるんです。今回は日々の営業に活用できる“メニューの水平展開・垂直展開”のお話をしたいと思います。

水平展開の例としては、

「ジャンボメンチカツが大人気なので、クリームコロッケも魚フライも全部ジャンボメニューにする」

「激辛ラーメンがヒットしたので、チャーハンもギョーザも全部激辛にして、激辛激ウマのお店として打ち出していく」

などなど

もちろん、すべて当たるわけではありませんが、当たれば大きい。もしかしたら、お店のメニューすべてが人気メニュー・ヒット商品になるかもしれません。

人気の要素、ウケた理由を抽出して、他の商品にも展開していく。この手法を

【水平展開】といいます。

※あくまで、自分のお店のメニューで人気が出たものを拡げていきます。他店の人気メニューをまねるのとは違いますのでお間違いなく!

その最大の強味は、あそこはジャンボ〇〇の店とか、全品激辛の店などのようにお客さんに覚えてもらいやすい事。

このワザ、どちらかといえば、比較的幅広い客層を相手にした、中規模店以上に向いています。真似されることもありますし、流行りすたりもあるので、声が大きいお店(情報発信に人やお金を掛けられるお店)が有利だったりします。

特定の利用動機に特化し、ピンポイントな投げかけをしている、地域密着の個店・専門店には仕掛けにくいワザ、と言えるかもしれません。

では、そういうお店はどうすればいいのか?

地域密着のこだわり店には、もう一つの必殺技【垂直展開】がオススメです。

これは、人気の要素、ウケた理由を、他商品に展開するのではなく、よりその要素の強い上位商品を開発・投入していく方法。

例えば、激辛ラーメンが受けたのなら、さらにその辛さと、美味さのマッチングを極めた、究極の激辛・激ウマラーメンを追求していくというような形。

これが、いわゆる【垂直展開】です。

これなら、ジャンルやメニューを限定した専門店や、こだわりのお店にも展開できる方法です。

しかもこの手法のいいところは、上位商品を開発、投入していくことで、「お店のこだわり」や「お店が目指すもの」といった、いわゆる、お店の“思い”が商品にどんどん乗っかってくる事。

つまり、商品が“あなたの考え方”や“お店の思い”を語ってくれるのです。

ただ一つだけ注意が必要です。いったいどの要素が“ウケて”いるのかをしっかり見極める事がカギ。

例を一つご紹介します。あるスープ専門店での出来事。日本でスープ専門店というスタイルがまだ珍しい頃にオープンしたお店のお話です。

同業他店はいませんが、販売しているメニュー自体もなじみのない物でしたので、お客さんへのアピールに苦労されていました。

積極的に新メニューを“お試し”投入して、お客さんの反応を見ながら、定番メニューを入れ替えていくor増やしていくという形で、日々地道なチャレンジを続けていましたが、ある時ついにヒットメニューが誕生しました。それは、トマトが1個丸のまま入った「トマト丸ごとスープ」

低迷気味だった売り上げも一気に跳ね上がりました。気をよくしたオーナーは“〇〇丸ごとスープ”のシリーズ化を指示。

そうして誕生したのが「玉ねぎ丸ごとスープ」「ポテト丸ごとスープ」。まさに水平展開です。

しかし、期待に反しどちらもさっぱり売れませんでした。

お客さんの声を詳しく収集してわかったのですが、お客さんには“〇〇丸ごと”がウケていたんじゃなく“トマト丸ごと”が支持されていたんです。

つまり、トマトの持つヘルシーなイメージや、赤くて丸いトマトがスープに入っている可愛さなどがウケていた理由でした。

このお店は玉ねぎやポテトで丸ごとスープを作るのではなく“激レア〇〇トマトが丸ごと入った奇跡のスープ”みたいなのを開発する(垂直展開する)べきだったんだと思います。


【土屋先生からの一言】

水平展開・垂直展開、ぜひ意識してみてください。ヒットの確率がぐっとアップするはずです。ただし、既存の人気メニューの“どこが”ウケているかをしっかり見極めてくださいね。

テイクアウトメニューを考える際にも活用していただければと思います。

もちろんメニュー分析(※)もお忘れなく!

※コラム第30~32話ご参照ください


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