第98話 飲食ビジネスの今後を考える

先週に引き続き、これからの飲食ビジネスはどうあるべきかについてお伝えしていきます。

今回は「価値の大転換」に対応した、具体策とその注意点等についてお話します。

先週のコラムで、これからの飲食ビジネスは

お客さんが来店しなくてもor滞在しなくても売上が上がる仕組み

が必要というお話をしました。

具体的には、

テイクアウト、デリバリー、通販

といったところになると思います。

もちろん、これを機に大胆な業態転換を図るケースもありますが、当然リスクも大きいので、資金力のある方や、コロナ前から苦戦業態だった総合居酒屋さん(比較的大箱の)以外にはあまりお勧めしません。

まず、全体に言えることですが先週もお伝えしたように、イートイン以外の取組を成功に導くカギは 飲食店の強味を活かすことです。

例えばテイクアウトならスタッフのコメント付き手作りPOPを頻繁に更新したり、お持ち帰り商品にレシピを添えたり、店主のこだわりを同封したり、といった事を継続して、売上を大きくアップさせたお店もあります。

イートインで培ってきた飲食店ならではの“おもてなし力”を物販においても発揮していただければと思います。

【テイクアウト】

まずは、多くの飲食店さんが取り組んでいらっしゃるテイクアウト。

これまで、テイクアウトはやってこなかったというお店(多いと思いますが)の場合、当面は売上の10%を目指してください。

テイクアウト用に新たにメニューを考えるのではなく、今お店で提供している(つまりお客さんにすでに売れている)メニューの中からテイクアウトできるものを販売していくのが一番確実。ラーメン専門店などテイクアウトに不向きな商品がメインの場合は、餃子や焼売といったサイドメニューをまず販売していくのも一つの方法です。

そして、あなたのお店がテイクアウトを始めたことを、しっかり知らせてください。長く続いているお店でも、テイクアウトを始めたことをお客さんは知りません。

ただ、これだけでは中々、イートイン売上を十分カバーできません。私の知る限り、テイクアウトが売上の10%に届かないお店も結構多いです。

そこで次に取り組んでほしいのが、

“特別な日のごちそう需要”

に対応したメニューの販売。

「お誕生日祝い」「結婚記念日」といったメモリアルデーのごちそうから、

「ホームパーティ」や「週末の家飲みのプチ豪華なおつまみ」等、

あなたのお店ならではの“ごちそうメニュー”をぜひ提案してください。

これらのメニューが安定して売れていくようになったお店は皆、テイクアウト売上で20%以上をクリアしています。

1点注意があります。

いつもお店で出しているメニューを販売するのは、基本的に問題ありませんが、デザートやパンの販売とか、惣菜やチャーシューを作り置きして販売するような場合は、飲食店営業許可以外の許可が必要になる事が多いので、詳しくは地域の保健所でご確認ください。

次に

【デリバリー】

デリバリーでまずぶつかる壁が「品質劣化」

デリバリーは、できたての料理を食べていただく事はできません。私たち飲食店の場合、出来立ての料理を食べていただく事に全力を傾けていますが、デリバリーはお客さんに届いた時に美味しさを保っていないといけません。

試しに、料理をデリバリー用の容器に入れてから30分後に、試食をしてみてください。炒めた野菜等は水分が出るので、作るときに塩味を強めにしておくとか、レンジで再加熱できる容器で届けるなど、劣化をカバーする工夫が必要です。

次に「価格設定」

通常、デリバリーは配達を委託するため、売上の35%から40%は手数料支払いが発生します。ですので、価格設定(あるいはデリバリー専用メニューの開発)が非常に重要。ここを慎重に行わないと、売っても売っても採算が合わない事になってしまいます。

もう一つの注意が「商圏の拡大」

半径250mとか500mという狭い商圏で勝負していた地域密着のお店がデリバリーを始めると、商圏が大幅に拡大(3kmとか5km)して、競合が一気に増えます。

さらに、イートインに比べお店とお客さんとの関係性が希薄なため、常に告知をし続けないと売上が落ちてしまうため、ローコストで継続可能な告知の仕組みを持つこと(オウンドメディアを持つ等)が大事。

なお、デリバリーもメニューによっては、飲食店営業許可以外の許可が必要になりますので、詳しくは地域の保健所でご確認ください。

そして

【通販】

最も期待できる大きな市場ですが、飲食店にとってハードルの高いジャンルとも言えます。実際取り組んだお店の多くは軌道にのせるまで苦労されています。商品開発、保存、梱包、発送、商品に応じた営業許可等々、始める前にクリアすべきことが多いです。

また、ネット通販が最も身近な仕組みと思いますが、ネット上だけで情報を発信して、顧客を獲得するのは簡単な事ではありません。商圏内では人気店・有名店でも、インターネット上では全く無名だったりします。

ですから、実店舗でビジネスをしている強味を活かし、リアル客を通販につなげる仕掛けが必要と思います。例えば、始めた当初は店舗で注文書やメニューを配布してFAXで注文を受ける、といった展開もありです。

以上、「価値の大転換」に対応した、具体策や注意点をお伝えしました。「不変の価値」を推進するための具体策等は次週詳しくお伝えしたいと思います。


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