第89話 とらわれない

私が見聞きしている範囲では、飲食店さんの繁盛度合いは二極化している印象です。満席で大賑わいか、ガラガラで閑古鳥が鳴いているかのどちらかしかない、と言っても過言ではありません。

私の地元・名古屋でにぎわっているのはしゃぶしゃぶの「木○路」とか、とんかつの「矢○とん」や味噌煮込みうどんの「山○屋」といった有名店。お昼時ともなればウェイティングが出る店舗も少なくありません。さらに、ミシュランの星が付いたお店や、食べ○グ百名店や点数評価3.5以上のお店なども、程度の差こそあれ、お客さんが入っています。

賑わっているお店に共通するのは、

知名度が高い

○○食べるなら□□(店名)という評価が確立している

メディアやグルメ口コミサイトなどのお墨付きがある

といった条件がそろっている、いわゆる“ブランド店”であるという点。

もちろん、上記の条件に当てはまらなくても、特定のファンに支えられて、安定した売り上げを作っているお店もあります。しかし、そういうお店が以前より減ってきていると感じています。

これはコロナ禍における、顧客心理が大きく影響しています。外食機会が減り、たまの外食なら間違いのない店に、という事で、有名店を選ぶ傾向がコロナ前より強くなっています。

誰しも自分のお気に入りのお店があるとは思いますが、周りも認めるかなりの食通じゃない限り、本当に久しぶりに会食する知人や友人を、ご自身のお気に入り店に連れて行くのは、ちょっと勇気がいると思います。

『自分は大好きなお店だけど、もし、満足してもらえなかったらどうしよう・・・』そんな心理が働いて、名古屋と言えば、みたいなお店になりがちです。これがコロナ禍ならではの傾向といえます。

結果、二極化してしまっている、というのが私の印象。

今は非常時です。こんな時こそ【過去にとらわれない】発想が必要です。

例えば、

[11時~23時の営業時間中、ずっとランチタイムのカフェ]

[朝も昼もディナーコースがメインの和食店]

[お客さんと市場にでかけ、食材選びから一緒に考えるレストラン] 等々

中でも私が一番印象深かったのは、オトナのための本格ハンバーガーを売りにしたあるお店が発売した

[15万円のフォアグラバーガー]

2人で15万円という10組限定のメニュー。このバーガーを注文したカップルには、「高級ペントハウス1泊(通常は1泊12万円)と、専属運転手による、観光スポットへの送迎サービス」という“特典”がついてくるというもの。

狙いは見事に当たり、このショップが狙う、“グルメな大人”達からの問い合わせが殺到し、あっという間に完売。

マスコミにも取り上げられ、話題となり、新参のバーガーショップの知名度は一気に上がりました。

こういった手法は[商品力はあるけれど知名度が低い]後発のお店が、大手や有名店と戦っていくための有効な戦い方です。

繰り返しますが、今は非常時です。外食に対する様々な価値観や常識がこの2年ほどで大きく変わってしまいました。

こんな時、地域密着のお店がお客さんの心をつかみ、行動を促すには、「自店の強味をしっかり認識」したうえで、【過去にとらわれない】発想をする事が必要です。

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【土屋先生からの一言】

飲食店を取り巻く環境は、引き続き厳しいですが、毎日お客さんで賑わっているお店も存在します。今までの常識の範囲だけで考えていては、なかなかいいアイデアはでてきません。

過去の実績や、同業他店がやっている事をベースに考えたりしたアイデアでは、お客さんになかなか響かないものです。

“過去”の常識を疑ってみましょう!

“今”のお客さんの気持ちを考えてみましょう!

そこから見えてくるものが必ずあると思います。

とはいえ“既成概念”や“常識”から抜け出すのは、なかなか難しかったりもします。

そんな時は、他業種に目をやってください。飲食関係者じゃない人と会話してみてください。きっとヒントが見つかると思います。

ただし、常識にとらわれない大胆な発想も、あくまで

基本価値(料理)と周辺価値(接客)

がしっかりしている事が前提ですので、その点はくれぐれも注意してくださいね。

【とらわれない】発想で、あなたのお店ならではのアイデアを見つけていただければと思います。


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