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第80話 いいわけ消費
前回のコラムで、地域に根ざしたお店がブランド化するためには、“特定の利用動機”で一番を目指すべきというお話をしました。
繰り返しになりますが、ちょっとおさらいです。お客さんに来ていただく条件はまず
「以前利用した時に、料理や接客などに満足していること」
これはいわば前提条件。利用したことがない方にとっては、直接or間接の高評価の口コミが広がっていくことが大切です。
次に
「SNSやメールやはがきなどでお客さんとつながっていること」
コロナ禍の今、できているお店とそうでないお店で業績の差が広がっているポイントです。これがまさに今最優先でやるべき事。
すでに誰もが知っている有名店ならともかく、これをやっていないと既存客のリピートも新規集客もなかなかうまくいきません。
そしてもう一つ、決め手といいますか、来店していただく確率をアップさせるのが、お店のブランド化。
この厳しい状況下でも、行列ができているお店があるし、近隣のお店はガラガラでも、賑わっているお店もあったりします。
わかりやすいのは、地域の有名店です。
私の地元の場合、
「味噌カツなら○○○」
「ひつまぶしなら○○○」
「きしめんなら○○○」等々、
いわゆる“名古屋めし”の地域一番店は強い!
緊急事態宣言が発出されても、オミクロン株が猛威を振るっても、集客は底堅いものがあります。
しかし、そこまでじゃなくても、コロナ禍で厳しいながらも、堅実経営をされているお店も存在するのです。それがまさに、「特定の利用動機において、地域一番」を確立しているお店。いわば地域限定の(商圏内の)ブランド店です。
「誕生日を祝うなら」「七五三のお祝いなら」「彼女との初デートなら」等々、ピンポイントな特定の利用動機で一番を獲得しているお店は、コロナ禍でもお客さんが安定して来てくださいます。
【コロナ禍で改めて注目される消費の“キーワード”は“いいわけ”】
実はこの消費スタイル、最近始まったものではありません。私が提唱するようになったのは、2011年の東日本大震災の頃からです。
何かが欲しいとか、何かが食べたいということではなく、何かを買うことで
あるいは、食事をすることで得られる価値(例えば安心、例えば家族の笑顔)
に共感できないと消費意欲を掻き立てられることはない。
つまり「せっかくの誕生日だから」とか「孫が喜ぶから」といったようなものにしか、お金を払わない、というわけです。すべてとは言いませんが、この消費スタイルがかなり主流になってきました。特に夜の外食においては。
以前このコラムでも、このコロナ禍でも好調なのは“ハレの日ニーズ”と言うお話をしましたが、これもまさにいいわけ消費のひとつです。
つまり、いいわけができるものにしか財布のひもは緩まないし、いいわけができないもの(普通の日の食事など)については、コストパフォーマンスの高さや絶対的な安さが求められることになる。
例えば、平日のランチはワンコイン程度のファミレスの日替わりランチやコンビニ弁当、あるいは自炊、で済ませるけれど、週末の彼女の誕生日には、特別なお店を予約して一人8千円のディナーを予約する。といったようなこと。これがコロナ禍でいっそう加速しています。
あなたのお店を利用するのにぴったりな“いいわけ”が定着していけば、地域限定の“ブランド店”になれる日が必ずやってきます。
もちろん、ただ待っていてはだめです。お店の強味や競合との関係などから「ウチは○○な時に利用していただくのが一番です!」とアピールしていかないと定着していきません。
しかし、ここで注意が必要。“いいわけ”というぐらいですから、そもそもは利用するお客さんの気持ちです。つまりお店の“売り”や“魅力”を、お客さんの目線で表現したものが“いいわけ”です。
ですので「絶品料理とくつろぎの空間で、極上のひとときをどうぞ!」と言われてもお客さんはピンときませんが「大切な方との思い出づくりにぴったりのお店です。」とか、もっと絞り込んで「彼女との初めてのデートにおつかいください!」とアピールしていくと反応してくれる方があるでしょう。人は自分事でないと心動きません。
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【土屋先生からの一言】
特定の利用動機を発見するのは難しいかもしれませんが、あなたのお店にしかない強み・魅力が必ずあるはずです。
お客さんをよくウォッチしてください。非常に限定されたお店の使い方がひそかに人気になっていることはありませんか?あるメニューやコースが静かなブームになっていることはないですか?
最初は小さくていいんです。あなたのお店ならではの“○○なら一番”を早く見つけ、そして徐々に大きく育てていってほしいと思います。
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