第70話 深化と進化 後編
先週のコラム「深化と進化」で、来年に向けての(特に夜のお酒メインのお店の)戦略や方向性について、私なりの考え(「深化」について)お伝えしましたが、今回はもう一つのキーワード 「進化」 についてお話したいと思います。
緊急事態宣言や、時短営業が解除になっても、お酒メインの夜型店にはお客さんがなかなか戻ってきません。
これは長引くコロナ禍において、私たちの生活スタイルが変容したことがそもそもの原因で、この傾向は今後も続くと思われます。
つまり、感染が落ち着き、ワクチンが行き渡り、さらに有効な治療薬が普及したとしても、私たちの生活スタイルはコロナ前と同じには戻らない(戻れない)と考えるべきです。
結果、これからの飲食店にとって、二つの重要な「キーワード」が見えてきました。
それは・・・
「深化」と「進化」
「深化」については、先週のコラム 第69話 でお話させていただきました。
今回は「進化」についてお伝えしていきたいと思います。
まずは、私が体験した、今時のお店選びの実例(典型的な例と言ってもいいのでは)をお話したいと思います。
先日、ある私的な用事で、夜の会食(お酒を伴う)をセッティングすることになり、仕事柄私がお店選びを任されました。
コロナ前ならその時々の参加者の希望に合いそうな候補がいくつか浮かんで、その中から決めていたのですが、今は違います。
もちろん、まずは、なじみの店が頭に浮かびます。こういう時期ですから、行ったことのないお店にはまず行きません。これは一般的にも言える傾向です。コロナ禍においては、グルメサイト経由より、お店のSNS公式アカウント経由の予約の方が上回ってきているというお話も複数耳にしました。
しかし、なじみの店で2-3候補が絞れてもすぐに決定とはいきません。それが今時のお店選びです。
「入店時のチェックは?」「席の配置等は密になっていない?」「換気は十分にされている?」などなど、コロナ前には考えられなかったチェックをします。
今回候補にあがったなじみの店の中から、最終的に決めたのは、
入店時に手指消毒や検温を実施
テーブル間はビニールの仕切りで密回避(テーブル席は一つおきに使用)
スマホでのオーダーと配膳ロボットの導入で人と人との接触を極力回避
5分で店内の空気が入れ替わる換気システム
プラズマクラスター稼働中
スタッフは8月までに全員ワクチン2回接種済み 等々
私が気にしている以上の対策を行っているお店でした。
そこは、50年以上続いている昔ながらのお店です。先行き不透明な中、コロナ対策に思い切った投資をされた社長に敬意を表します。
来店時にはもちろん私も自身の体調確認(自宅で検温&酸素飽和度の計測)を行いました。友人たちにも当日の体調を確認。
ここまでしなくても、常連さんで連日いっぱいになっている、お酒メインの夜型店もたしかにあります。
また、こういうお話をすると気にし過ぎとか、そこまでやる必要はないという方もいらっしゃいます(大体5人に1人位)が、お店選びのプロセスはこういう形が主流になっていくのではないでしょうか。
人と人の接触機会を極力減らす・・・おもてなしとは真逆に思えますが、これが、新しいスタンダードなんだと思います。
実際、今年の予約は幹事さんが、席と席の距離とかアクリル板やビニールシートの有無、換気について等、非常に細かく質問されると聞いています。
もちろん、スタッフとの会話や濃密なコミュニケーションあっての、地域密着の飲食店だと思うし、“人”がナショナルチェーンなどとの差別化の決め手になっていることも多い。
でも、しかし、「進化」は必要なんです。
コロナ対策万全(と言っていい)前述のお店は、平日の夜にもかかわらず、多くのお客さんで賑わっていました。
誤解のないよう申し上げておきますが「深化」あっての「進化」です。
お客さんを魅了するおもてなし力をさらに磨き、
お客さんの興味や関心を常に惹きつける情報発信力をさらに高める、
という「深化」が大前提です。
ただし、人が集まること、人との接触そのものがリスクであるコロナ禍において、お客さんに満足していただくには「進化」も重要な事だと私は考えます。
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【土屋先生からの一言】
おもてなし業である飲食店においても、非接触が今後の流れです。ではどうやってお客さんとコミュニケーションをとるのか?重要になってくるのは、オンラインでの接触を増やすことだと考えます。
まだ完全な答えは見つかっていません。引き続きみなさんと一緒に考えていけたらと思います!
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