第41話 地域密着の飲食店は今‐コロナ禍で取り組んできたこと

今回は、第14話でご紹介したレストランのコロナ禍での戦いぶりをお伝えしたいと思います。

そこは席数20席ほどの小さなレストラン。15年前にお会いした時はピンチでしたが、顧客リストの収集と定期的な情報発信への取り組み、さらに「誕生日祝いなら〇〇」という、特定の利用動機での地域一番店となり、その後は徐々に間口を広げ、今や記念日専門レストランとしてブランド化に成功したお店です。

※詳しくはコラム第14話をご覧ください

今回は、愛知県への第3回目の緊急事態宣言の発出直後に、オンラインでお話を伺いました。

近況

5/12の緊急事態宣言発出から、来店や問い合わせがさらに一段下がったそうです。愛知の緊急事態宣言は3度目ですが、その影響力はやはり大きいとの事。

今年になってからのイートイン売上はコロナ前に比べ約半減。一般的にレストランの売上の8割はフードといわれていますが、このお店は記念日専門だけに、アルコール比率が高目で、アルコール類の提供自粛がかなり響いています。

コロナ禍の今、取り組んだこと

1.テイクアウト

昨年の7月から取り組みを開始。今は月の売上の2割~3割がテイクアウトによる売り上げです。(私の知る限りかなりいい数字)

「結婚記念日テイクアウト」「お食い初めテイクアウト」「還暦や喜寿のお祝いテイクアウト」等、自店の強みを生かした商品を次々に投入。常連客中心に毎月安定した売上を作っています。

オーナーシェフ(以後Aさんとします)によれば、

「一定の売上がカバーできるし、お客さんとの新しいコミュニケーションが継続できるので挑戦してよかった」との事。

しかし一方で、テイクアウト用の容器のストックが、思った以上に場所を取ることなど、やってみて気づいた事もありました。

また、イートインとテイクアウトが、片方がいいともう一方が悪いといった具合に、反比例の関係になっているようで、テイクアウト部門として別の設備やスタッフでも抱えない限り、落ち込んだイートインの売上げをテイクアウトで100%カバーするのは難しい、というのがAさんの実感です。

2.デリバリー 

地方都市のさらに郊外のお店なので、自店の商圏に対応するデリバリーサービスが中々見つかりませんでした。最近やっと可能になったそうです。ただ、売上の30%以上をデリバリーサービスに支払うため、メニュー構成は要検討です。

3.通販

「テイクアウトは飲食店の延長線で何とか可能ですが、通販は全く違う。別事業として取り組まないと難しい。少なくとも別の“脳みそ”が必要。」というのが昨年夏頃から取り組んできたAさんの実感。テストをして、真空パックが真空にならなかったり、梱包・包装のトラブルなど、様々な問題が起こりました。しかし、今年の秋頃にはスタートできそうです。


4.その他

4-1.顧客リストの整備

お客さんが少なくてヒマ!ということは、見方を変えれば、普段できなかったことをするチャンス。Aさんが取り組んだのは、顧客リストのクリーニングでした。

“お客さんとの定期的な接触”がここのところできていなかったので、この機会にお店が収集してきた約1,800名の顧客リストすべてにDMを発送。宛先不明で戻ってきた方をリストから削除していくことに。

費用はDM制作費も含め20万円近くかかりましたが、リストのメンテナンスは今後の情報発信に欠かせません。なお、Aさんは国の支援制度である「持続化補助金」を活用し、金額の大半は補助されます。

非常事態ですから、協力金、給付金、補助金、さらに無金利融資など、活用できるものは活用すべきと思います。(ただし前向きなことに)

4-2.コラボチラシ

近隣のお店(アロマショップ、フラワーアレンジメント教室、パン屋さんなど)5軒と共同でチラシを制作し、各店で配布しました。そのチラシを見て即来店とはいきませんでしたが、コラボしたお店関係の方が利用してくれたそうです。

Aさん「短期間で5軒も集まったのは驚き!」との事。非常時で地域のお店同士が“力を合わせよう”という意識が高まっていたのだと思います。お店とお店、お店とお客さん、お客さん同士 等、地域で様々なつながりが広がっていければと思います。

以上、鮮やかな成功事例ではありませんが、地域密着の個人店のこの1年の取り組みを、簡単ですがお伝えしました。明日からの行動のヒントに少しでもなればと思います。

なお、今回の会話の最後に聞いたAさんの言葉がとても印象的でした。

「去年も今も苦戦中に変わりはないですが、この1年色々取り組んできたので気持ち的にはかなり違います。去年は不安しかなかったですが、今は“ちょっぴり”自信も出てきました。」

前を向いていきましょう。


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