第124話 一貫性
人気のお店や、繁盛店と言われるお店の多くには【一貫性】があります。メニュー構成、店舗の雰囲気、接客スタイル、BGM、さらに箸袋やコースターのデザインに至るまで統一感があり、一本筋が通っています。この【一貫性】が“お店のブランド力”につながっていくのです。
そういうお店は、自店にとって何が良くて何が悪いかを良く知っています。つまり、明確な判断基準を持っているので、自然とそうなってくるものなのです。
当然譲れない一線があり、その点に関しては、かなり頑固といってもいいでしょう。しかしその反面、いいと思ったことは積極的に取り入れる柔軟性も持ち合わせています。
明確な判断基準を持っているというのはつまり、
『お客さんがどう感じるのか?』 『お客さんからみてどうか?』
という点を常に意識しているという事です。
私が相談を受けるのは、料理人出身のオーナーが経営する個人店が多いです。料理へのこだわり、味への追及にはストイックですが、どちらかといえば【お客さんからみてどうか】といった事に無頓着な方もいらっしゃいます。
コンセプト重視の創作料理店やくずし懐石のお店などでたまに見られる、
[伝統あるスタイルに現代の要素を加える]とか、
[“和”の世界に“洋”の要素を一部取り入れる]といったように、
あえて狙ってやっているならもちろんOKなのですが・・・
『お客さんがどう感じるのか?』『お客さんからみてどうか?』という点に無頓着だと、日々全力でおもてなししているつもりでも、お客さんにはなかなか伝わらない、という事になりがちです。その結果、料理のレベルは高いのに、業績はイマイチ、という状況に陥ってしまうのです。
そこで今回は、これほどちぐはぐな事例(【一貫性】がないお店)は珍しい!といっていい、あるお店を紹介します。反面教師として参考にしていただければと思います。
それは、売上げ停滞に悩んでいた、あるイタリアンのお店のご相談に乗った時の事です。
ピザやパスタといった、カジュアルなメニューから、アラカルトやコース料理も充実しているお店でした。
私も実際にお邪魔していただきましたが、確かに料理はどれも美味しかった。美味しかったのですが・・・
そのお店の【一貫性】のなさは、なかなか強烈でした。
・本格的なメニュー構成なのに、スタッフのユニフォームはなく、厨房スタッフもホールスタッフもカジュアル感満載!
・BGMがなぜかJ-POP
・各テーブルのカスターセット(調味料セット)が、ほぼほぼ家庭用
・店内のマガジンラックには週刊漫画やスポーツ新聞がたくさん
以前、喫茶店だったのを居抜きで譲り受け、厨房スペースだけ若干手直ししてスタートしたとの事ですが、それにしても・・・
私はまず、本格的な現状分析の前に、目につくところを変えていただきました。コンサルティング以前の話です。
・ホール係も厨房も全員、同じエプロンを着用、下には白シャツ着用
・各テーブルのカスターセットをグレードアップ
・BGMをJ-POPからイタリア民謡やクラシックテイストに変更
・マガジンラック(及び雑誌・新聞)の撤去
すると、これだけのことで、客単価が少しアップしたのです。さらに帰りがけ
に「美味しかった、ごちそうさま」と声をかけてくれるお客さんも増えました。
いうまでもなく、料理は五感で味わうもの。【一貫性】を大事にする人気店・ブランド店は、お店の外観や内装はもちろん、テーブルの小物ひとつに至るまで、細かい気配りをします。
これは極端な例かもしれませんが、あなたのお店は大丈夫ですか?
もちろん、おいしい料理や心のこもった接客が大前提ですが、世の中にお店もお店情報もあふれている今、第一印象でダメ出しされてしまったら、きっと次はないでしょう。
【土屋先生からの一言】
まず、あなたのお店の立ち位置をしっかり決めましょう。
そのうえで『お客さんがどう感じるのか?』『お客さんからみてどうか?』を常に意識してください。すると、料理のクオリティだけでなく、様々なチェックポイントがあることに気づいていただけると思います。
そのチェックポイントを一つ一つ丹念に修正・改善していただく事で、お店に【一貫性】が出てきます。その結果、あなたのお店を利用したお客さんの満足度が大きくアップすることは間違いないと思います。
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