第39話 バトルフィールド

Battlefield(バトルフィールド)とは、まさしく戦場の事。ビジネスにおいても自分に有利な場所で戦うことが成功につながります。

今回はそんなお話をしたいと思います。

昨年の初め頃、2軒の麺屋さん(うどん屋さんと蕎麦屋さん)から続けてご相談がありました。

立地や地域も違っていて、さらにはお店の繁盛度合いもそれぞれでしたが、どちらのお店も、地域に根ざした個人店・専門店という共通点がありました。日本の食文化を担う素敵なお店です。

ですが、なんともう一つ共通点があったんです。しかも、どちらのお店もそれが繁盛の足を引っ張っていました。

私がどちらのお店でも感じたのは、価格が安過ぎるという点。正確には、提供している価値に比べ売価が低いという事です。

それを指摘すると、両店のご主人は口をそろえて、
「いや、ウチは普通のうどん(蕎麦)屋ですし・・・」といったような答え。この気持ちわからないでもありません。

麺類は、第二次大戦直後の食糧難の時代“代用食”なんて言われ、米が食べられない時に、空腹を満たす臨時の食事、という位置づけがありました。

戦後間もない頃からやっている昔ながらのうどん屋さん、お蕎麦屋さん(特に地方の)には、未だにその影響が残っていて、提供している料理の品質と、価格がマッチしないお店が結構まだあったりします。

どちらのお店も「この味なら、このあたりじゃどこにも負けない!」というお店です。にもかかわらず、セルフうどんやそばのチェーン店よりちょっと高いぐらいの値段で提供してしまっている・・・

結果、結構お客さんが来ているにもかかわらず、儲けはわずか、という事態に陥っているわけです。

その昔、飲食店が少なかった頃はそれでも良かったんですが、今は違います。

合理化・省力化、あるいはスケールメリットによるコストダウン等々、安くて手軽なお店は、今や大手の得意分野です。そもそも、安さの基準が違ってきています。

安さや手軽さで勝負するなら、大手チェーンが得意とする“バトルフィールド”で戦わなければなりません。

マーケティングの鉄則に
【価格競争は、規模の大きいところが必ず勝つ】
というものがあります。全国チェーンなどに比べ、相対的に規模が小さい地域密着のお店がここで戦うのは非常に厳しい。

地域密着の個店・専門店は「手間もコストもかかってもいいから、食べたい!」と思われる分野こそが戦うフィールドなんです。

サラリーマンの“平日ランチ”はワンコインでも、ママ友の“月に一度のランチ会”は、2,500円の松花堂弁当かもしれませんよね。

『今日は特別な日。美味しい料理や、特別なひと時を、お金を余分に払ってもいいから、味わいたい・楽しみたい。』

こういう人たちを満足させるのが、地域密着の個店・専門店の“バトルフィールド”だと私は思います。
こういうお話をすると「それは十割蕎麦の店とか、高級フレンチとか、元々こだわっているお店の事でしょう。ウチみたいな日常食を提供している、普通の店は無理ですよ。」という反論が結構返ってきますが、決してそんなことはないんです。

確かに簡単ではないかもしれません。しかし、大手チェーンが得意とする“安くて便利なニーズを満たす市場”に参入しては、100%勝ち目がないわけですから、ここは可能性がある“場”で戦うべきではないでしょうか?

“普通”のお店でも、やり方はあります。知恵を絞れば勝てるんです。

「では具体的に何をすればいいのか?」という点につきましては、次回のコラムでご紹介したいと思います。お楽しみに!


【土屋先生からの一言】

お客さんが“満足”してくれるのは、どんなお店でしょう?

安くて気軽なお店でしょうか?

魅了されるほどおいしいお店でしょうか?

身も心も癒される感動接客のお店でしょうか?

あるお客さんにとっては“イエス”でしょうし、また別のお客さんにとっては“ノー”だと思います。

要はその時のお客さんがどんな 利用動機 で来店されているかで決まります。

そしてその利用動機が満たされたときはじめて

 価値>価格

となり「ここはいいお店だ!また来ようかな」と思ってくださるはずです。

利用動機が満たされなければ、

 価値<価格

ということになり、例え、地域一番の激安店であっても、ミシュランの星付きの超人気店であっても、次の来店はまずないと思います。


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