第65話 集客UP実況中継-視野を広げる

わが国では今、新型コロナウィルスの感染が落ち着いているようですが、どうやら、完全に封じこめるのは難しいというのが、多くの専門家の見方のようです。

つまり、私たちの行動が完全に元に戻るわけではありません。最近の世の中の動きを見ていても、そんな傾向が見て取れます。

飲食店さんとしては、今後も引き続き、テイクアウトやデリバリーなど、イートイン以外の新たな売上の柱を持つことは必要と思います。たとえ今は小さな規模だとしてもです。

今回は「宅配」の大胆な活用で、お店のピンチを救ったお話です。個人経営のお店の体力で可能な取り組みですので、参考にしていただければ幸いです。

大都市に隣接する市のそのまた郊外にあるお店です。オーナーは外食企業に長年勤めて独立された方。元勤務先の不振店だった物件を買い取る形でスタートしました。

しかし、筋金入りの悪立地でした。鉄板居酒屋だった業態を「お好み焼き店」に変えて若干好転したものの、オーナーが先頭に立って、定休日なしで営業して、なんとか損益分岐点ギリギリか、ややマイナスといった状態。

お店を始めて10ヶ月ほどが経過、色々手を打ってきたものの、一向に業績が好転しません。資金的にもかなり厳しくなってきました。

そこで、お好み焼き店のイートインの業績改善だけでなく、少し視野を広げて様々な策を検討することにしました。そして最終的に絞り込んだのが「宅配」です。

既存店の魅力アップ~売上アップをあきらめたわけではありません。しかし、当面確保すべき売上も必要という事での決断です。

そして彼はなんと「釜めしの宅配」を始めました。彼のお店は「お好み焼き店」。普通ならお好み焼きを宅配しませんか?

しかしそれは、売り手の都合。そこで彼はまず、宅配で何が人気なのかの調査を開始。その結果、当時宅配の両横綱は「寿司」と「ピザ」であることが判明しました。

ただこの2大人気市場には、強力な先発組がいて、入り込むすき間がありませんでした。

そこで目をつけたのが、「寿司」と「ピザ」に次ぐ大きな市場がある「釜めし」の宅配。しかし、彼は、釜めしを作ったこともないし、宅配ノウハウもありません。そこで、あるFCに加盟し取り組みを始めました。

加盟金も非常に低く、そもそも飲食店をやっているので、厨房設備もわずかな追加投資で済みました。

これが、お好み焼き店オープンから約1年後のことです。それから2か月後、停滞していたお店の売上がやっと上向き始めました。

実店舗(お好み焼き店)をやりながら、新業態(釜めしの宅配)に取り組むというのは、コロナ前にはあまりない発想でした。今のバーチャルレストランの先駆けといっていいでしょう。

ただ、当時はデリバリーサービスがまだ都市部以外は浸透しておらず、郊外のさらにはずれにある彼のお店の場合、宅配を自前でやらないといけません。

最初は宅配可能な時間帯やエリアを限定して、彼自身が自家用車で各家庭に届けました。

この頃が体力的には一番きつかったそうですが、提供時間やエリアを拡大すればするだけ売上も伸びたので、なんとか頑張れたそうです。

その後は注文の増加に合わせて配達用のバイクをそろえ、バイトも雇い、売上はさらにアップしていきました。

なお、宅配の一番のメリットは、意識しなくても顧客リストが増えていく点。色々気配りしながら、顧客の連絡先を収集するイートイン業態とは比べ物になりません。

そして、釜めしの宅配が軌道に乗り、ある程度の顧客数が集まってきた頃、「お好み焼き」の宅配の案内も始めました。こちらは完全オリジナルメニューで、お店で食べられることも同時にアピール。

すると「お好み焼き」の宅配にもすぐに注文が入り始め、売上も順調に伸び、お店に食べに来てくださる方も徐々に増えました。

結果、お好み焼き店オープンから約2年半、宅配とイートインを合わせたトータルの月商は、当初のお好み焼き店の2倍近くになったのです。

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【土屋先生からの一言】

先週のコラムでもお伝えしたとおり、原点に帰って取り組んでいただく事が、お店を元気にするための、いわば正攻法です。

しかし、毎月赤字になっているようなケースでは、早急な収支改善が第一優先です。私たちは追い詰められてくると視野が狭くなってしまいがちですが、そんな時こそぜひ【視野を広げて】考えてみてください。

そして、もう一つ忘れていけないのは“お客様目線”。売り手の都合だけではなかなかいい結果は出ないもの。「お客さんが何を求めていて」それに対し「あなたのお店は何が提供できるのか」についても考えていただければと思います。


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