第42話 最強の差別化とは?
今回は、地域密着のお店ならではの差別化についてお話しようと思います。
差別化・・・商圏内で圧倒的ナンバーワンでない限り、お店が戦っていく上で欠かせない要素です。しかし、多くのお店が勘違いしているのもこの差別化。
「〇〇港直送!鮮度にこだわった云々」
「有機野菜を使った安心で安全な云々」
「朝びき地鶏を秘伝のたれで云々」といった料理に関するものや、
「○△の夜景が一望できる云々」
「4~30名様までの各種個室完備で云々」
「時間を忘れるくつろぎの空間で云々」などの施設の魅力に関するものなど、
どのお店もこういったアピールが一般的。たしかにこういった事も、差別化の一要素ではあります。
しかし、料理や施設の魅力だけだと「ミシュランの星付き!」とか「カリスマシェフ〇〇の店!」とか「創業300年の銘店!」といった、有名店や老舗の強烈でわかりやすい魅力の前で、残念ながらほぼ無力化してしまいます。
あなたのお店の魅力はそれだけですか?いえいえ、あなたのお店には、もっと強力な差別化要素があるはずです!
それは、あなた自身。
あなたのお店の料理がどれほど素晴らしくても、店内空間が最高でも、窓から見える景色が絶景でも、実は差別化の決め手にはなりえません。
必ず同じような魅力をアピールしているお店があるからです。その差は大半の人にはわからない。
しかし、あなたという人は、地域で、いや日本で、いえいえ世界で、唯一の存在です。当然、他店では絶対に真似ができません。
ミシュランの星がついていない、カリスマシェフもいない、創業〇〇年という歴史もないお店(たいていのお店がそうだと思います)が、前述のような有名店や老舗に対抗するには、お店の(あなたの)“思い” を伝えることだとこのコラムでもお伝えしてきました。
あなた自身が“なぜこのお店をやっているのか”という、“思い”を発信する事、そして共感してもらう事が、最強の差別化になります。
難しく考える必要はありません。例えばあなたの“思い”が「お客様を笑顔にしたい」であったとしましょう。
言葉にしてしまうと、ありがちな“思い”であっても、そう思えるようになったきっかけや背景は一人一人違うはず。それを自分の言葉で語れば、世界で唯一の魅力になりえます。
ちょっと想像してみてください。
中々予約が取れない、ミシュランの星付きのレストランに招待されたら、ぜひ行きたいですよね。でも同じ日に、恋人が手料理をふるまってくれる、と言ったら、あなたはどちらを選びますか?
料理や施設の魅力だけをアピールしていては、有名店や老舗に勝てません。そこに“あなた”という要素が加わることで、代わりのきかないお店になるんです。
余談ですが、以前私の友人の経営コンサルタントから聞いた“人”が強力な差別化要素だったという、ちょっと驚きの話をご紹介します。
かつてブームだった、無人洗車場を全国にFC展開していた某企業の話。
ブームはやがて過当競争となり、その企業も全国の加盟店から苦戦の報告が上がってくるようになった時、1店舗だけ売上堅調な洗車場があったそうです。
特に立地がいいとか、特別な設備があるとかじゃありません。さっそく本部のスタッフが調査に向かい、そして意外なことに気づきました。
実はその洗車場、全国でどこもやっていなかった事をやっていました。その無人洗車場にはなんと、“人”がいたのです!
そこのオーナーは、息子さんにお店を引き継いだいわば御隠居さん。時間に余裕があるため、毎日洗車場に通っていたんだとか。もちろん、お客さんに何かを提供するわけじゃありません。(無人洗車場ですから)
毎日そこにいて、お客さんがくればにこやかに挨拶する。顔見知りの方が利用しに来てくれれば一言二言声をかけたりもする。
しかし、そのことが、他のお店が苦戦する中、売上を伸ばしていた主な要因でした。FC本部も驚きの結果だったそうです。
「人は最強の差別化要素」の典型例と言っていいのではないでしょうか。
【土屋先生からの一言】
今はコロナ禍で、人と人との接触が制限されています。そうなると、人はかえってつながりを求めるものです。
外食産業全体には強い逆風が吹いていますが、地域密着のお店に有利な時でもあると私は思います。
あなたのお店の最強の差別化要素、それは間違いなく“あなた自身”です。
美味しい料理やくつろぎの空間をアピールすることと合わせて、あなた自身をしっかりアピールしていただければと思います。
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