第81話 ある個人店の挑戦

今回は、コロナ禍という厳しい環境で奮闘している、あるお店の2年間の挑戦のお話をしたいと思います。

「○○でV字回復!」とか「コロナ禍でも満席!」といったお話ではありません。地道な努力の積み重ねで“負けない戦い”を展開しているお店です。参考にしていただければ幸いです。

そのお店は名古屋市の郊外にあるフレンチレストラン。私が集客UP塾を立ち上げたころからのお付き合いで、正真正銘の塾生さん第一号。以前、このコラムで紹介したこともあるお店です。

お店は1996年の創業。初めてお会いした時は業績が思わしくなかったのですが、その後「お店のブランド化」と「お客さんとの定期的な接触」という、このコラムでもご紹介してきた【繁盛の二大法則】を実践していただき「記念日をお祝いするなら○○が一番」という評判を確立されたお店です。小さなお店ですが、これまでに1万人以上の方の記念日をお祝いしてきました。

しかし、2020年春からのコロナ禍で、時短営業や酒類の提供中止、密を避ける席数減(18席→12席)などで売上は急降下しました。

挑戦その1

まずはお客さんに安心して楽しんでいただくため、感染症対策に注力。

・テーブル、食器類などの除菌の徹底

・店舗にオゾン発生器、空気清浄機を2台設置 ・アクリル板による間仕切り 

・体温センサー/CO2センサーの設置 ・換気扇を5台に増設 など

この徹底ぶりが評価され、県のコロナウィルス感染防止対策実施店舗認証制度『あいスタ認証』最高ランクの3つ星を獲得!

しかし、お客さんは戻ってきてくれません。安定して予約が入っていたコロナ前とは全く違う状況になってしまったのです。

挑戦その2 テイクアウト

そこで、2020年5月からはテイクアウトを開始。しかし、ご主人曰く「最初は大失敗でした!」とのこと。

始めたのは手軽なお弁当。これが中々売れません。ロスは出るし、弁当用食材や包装資材のストックスペースは思った以上に必要になるし、時間も手間もかかる。

このお店は記念日専門レストランです、手間ひまかけた料理と、一組一組丁寧におもてなしするのが本来の魅力。(コロナ前の夜の平均客単価は1万円ほど)

お手軽弁当では強味が全く生かせません。結果、弁当を頑張れば頑張るほどマイナスに・・・

好転したのは、以前利用してくれたことのあるお客さんからの一本の電話がきっかけでした。

「コース料理をテイクアウト出来ませんか?誕生日に弁当やピザは寂しいので。」

ご主人、はっと我に返ったそうです。そこで、得意の誕生日&記念日のコース料理をテイクアウトにしたところ、これが見事にヒット、今では売上の2割ほどを安定して稼いでくれているそうです。

しかし、この2年間で、緊急事態宣言やまん防の実施、そしてそれに伴う時短営業や酒類提供の制限などが何度も繰り返され、イートインは一向に安定しません。席数減の影響も大きいです。

そこで、コロナに打ち勝つ強いお店にするためのもう一つの挑戦が始まりました・・・

挑戦その3 通信販売

実は、通販を始めるための準備は2020年から進めていましたが、実現するためには[梱包・包装][許可の取得][お店の増築・改修の必要性]など、様々なハードルがありました。しかしご主人は時間をかけて一つ一つクリア。最後に残ったのが「おいしさをどうやって届けるか?」という問題でした。

通販では、素材を新鮮なうちに下処理してできるだけ良い状態で冷凍してお届けすることになります。でも、普通の冷凍では味が落ちてしまいます。

そこで見つけたのが、液体アルコールによる急速凍結機。食材へのダメージが少なく、美味しさをそのままに冷凍できるというもの。試しに、サーモンのマリネを解凍して食べたところ、生食のように美味しかったそうです。

急速冷凍機の導入費は110万円ほど。コロナでダメージを受けている小さなお店にとっては高額、そこで・・・

挑戦その4 クラウドファンディング

クラファンの活用で急速冷凍機導入を実現し、通販への取り組みを開始させようというチャレンジです。これが実現すれば、「通販」という、新たな収益の柱を育てていけるはずです。お店のファンはもちろん、全国の方々に熱いメッセージを発信しています。

今月末までのプロジェクトです。詳しい内容を見てみたい、という方はGoogleなどの検索エンジンで「コロナ禍で店を守り抜く」と入力してみてください。

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【土屋先生からの一言】

実はご主人、数年前脳出血で倒れて入院した経験をお持ちの方です。

今回お話を伺った際にも「あの時のことを思えば、『なんとかなる』と前を向くことができました。」といつもの人懐っこい笑顔で話してくださいました。

この挑戦がぜひ成功して、全国のお客さんに“美味しい”を届けて欲しいと思います。 そしてこの記事を読んでいただいた方々にも“元気”がお届けできれば何よりです


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